◆◇◆FIRST LOVE-Another Story-◆◇◆












裂け谷の主、エルロンドは最近悩んでいた。







「…最近、と戯れていない…。」



いつもいつも仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事……。




せめて食事くらいは一緒に、と思うがそれすら叶わないときもある。



「もしこの先が成長して、思春期が来て、そして反抗期が来て
 “お父さんのパンツと一緒に洗濯しないで〜”とか言い始めたらどうしたらよいのだ!!」


なんだか基準がズレているような気がするが…。



もう一人の娘、アルウェンはロスロリアンにいるし、裂け谷にいるが双子の息子達は
相手にするだけでエルフといえど寿命を削られそうだ。





大きくため息をつくと自室から執務室へと足を運ぶ。

その後姿は哀愁が漂っていた。













一方、エルロンドの娘のも悩んでいた。


「…最近、エレストールといっぱい一緒にいられない!!」



元々多忙な宮廷顧問長。

公務の合間を縫ってに勉強を教えてくれている。



だが、その勉強の時間も終えれば彼はまた公務へと戻るため、
実質一緒にいられるのは長くて3時間。


短いときは1時間も一緒にいられない。








人間でいうと大体6,7歳の子供のだが、
子供なりにちゃんとエレストールに恋をしている。


だったらできるだけ長く一緒にいたいと思うのも必然。






どうにかして、勉強以外にも一緒に居られないものかと考える。





そして、に良い名案が浮かんだ。



後はそれを実行あるのみ。





善は急げと言わんばかりに足早に執務室へと向かった。











一方執務室では。


「エレストールよ。少し休憩にしないか?」

「いけません。残り約5000枚の書類を今日中に目を通してもらってサインしていただかないと。」

「だ、だが最近と全然話をしてないんだ。
 もしがぐれたりしたら私は…」


忙しすぎておかしくなったのか妙に慌てるエルロンド。


「ご安心を。姫に限ってそんなことありません。私がしっかりと監視しています。
 だからしっかり執務に集中してください。」



がくっと項垂れるエルロンド。


それを見ている武官長、グロールフィンデルは苦笑いをしていた。





仕方ない、と諦めて再び書類を手に取るエルロンド。

丁度その時執務室の扉からノック音が聞こえる。



「公務中失礼します。です。父上いらっしゃいますか?」




その声にエルロンドは目を輝かせ思わず椅子から立ち上がる。


しかし、エレストールがそんな主を一睨みして“貴方は大人しく仕事をしていなさい”と訴える。


エルロンドの代わりにグロールフィンデルがを出迎える。





「どうしたんですか?姫。」



扉を開けて中にエスコートすると、真っ直ぐとエルロンドを見据えた。




「お父様…最近お仕事ばかりですね…。お食事も一緒にできませんし…。」


淋しそうなの表情にエルロンドは即座に立ち上がりの元へ駆け寄る。



「すまない…最近忙しくて…。を構ってやることも出来なかったな…。」


の目線に合わせてその愛しい愛娘を抱き寄せる。


後ろからエレストールが

“貴方がいままで滞っていた分でしょう”と、言ったがあえて気にしない。






「今まではお仕事だから仕方がない、と我慢していましたが…。もう我慢できません!!
 は淋しいです!!」


その大きな瞳には涙がうっすらと見えた。



エルロンドは慌てふためき、きつく抱きしめ額にキスを降らせる。




「だ、だから。お願いがあります。」


「何だ?言ってみよ。」



きっと今ならどんなお願いだって聞き入れるだろう。



だが、のお願いとは予想とは遥かに違った。





にもお父様達の公務を手伝わせてください!!
 公務をしていたらいつもお父様と一緒に居られるでしょう?」



その台詞にエレストール、グロールフィンデルは声を失う。



「…姫……さすがに公務を貴方に手伝わせるわけにはいきません…。」

眉を寄せて言うエレストールには残念そうな表情。



「そ、そうですよね…。ごめんなさい…我侭を言って……。」

“失礼しました”と言って踵を返すの頬には涙が伝ったように見えた。



「待ちなさい、。」


それを引き止めたのはエルロンド。

「そこまで言ってくれて父は嬉しいぞ。
 分かった。にも公務を手伝ってもらおう。」



その台詞に案の定エレストールが反論する。



「何を言っているのですか!!そんな簡単に手伝わせるわけにはいかないでしょう!!」


「簡単な書類整理や処理済の捺印押しなら出来るだろう。」


確かにその程度なら…とエレストールも考えるが、主の娘に仕事をさせると言うことが
エレストールはどうしても嫌だった。



ちらりとの方を見ると、“お願い”とうるうる目でエレストールを見上げている。




その瞳に負けたのか大きくため息をつき了解をせざるおえなかった。








「分かりました…今日だけですよ…。」


顧問長の許可が降り、親娘は手を取り合い喜んだ。



「じゃあは私の隣で公務をすると良い。」


いそいそと自分の椅子の隣にもう一つ椅子を置く。


「は〜い。分かりました〜!!」



と、元気良く返事をしてとてとてと父のそばに向かう。



そんな姿を後ろから見ていたグロールフィンデル。

が、彼は不意にが何かを落としたことに気づく。



小さな手のひらサイズの入れ物。



「…これは目薬か?」


まさかさっきの涙は…と考えるが、すぐに頭を切り替え自分の席に戻った。





嬉しそうにに説明をするエルロンド。

それを嬉しそうに聞く



そんな微笑ましい親子の光景に武官長は頬を緩める。







は一通りの説明を受けると慣れないながらも少しずつ仕事をし始めた。


エルロンドもが隣にいるということでいつもの倍以上の速さで仕事を片付け始める。




「姫がここに来たおかげで今日中に仕事がほとんど片付きそうですね。」


エレストールが小声でグロールフィンデルに言う。

「そうだな…。卿は姫に甘いから。」


そう言っての方をちらりと見ると、妙に不適な笑みを浮かべている。


たとえるならそう、双子のエルラダンとエルロヒアがイタズラをしたときのあの顔。













実はが行き成り公務をしたいと言ったには別の理由があった。


いつもエレストールは主である父のエルロンドと一緒に居る。

だったら父に甘える振りをして執務室にいたら自然とエレストールとも一緒にいられる。


もちろんさっきのやり取りもの計画の範疇内。


我侭を言ったらきっとエレストールに叱られる。

だから押してだめなら引いてみる作戦のために目薬で嘘泣きをしたのだ。






だが、そんなことは誰も気づかない。


グロールフィンデルだけが少し勘付いたが、騙されたエルロンドや
この作戦の目標であるエレストールはのいじらしさに頬を緩めずには居られなかった。








「ねぇねぇ、エレストール。この書類全部そろえたわ。
 どこに置いたらいいのかしら?」


「これはこちらの棚ですよ。残りはあちらの棚になります。」


一つ一つ優しく説明するエレストール。



そんな彼を恋する乙女の瞳で見ていたに、
グロールフィンデルは少しだけ気づいたかもしれない。







何がともあれ、今回一番不幸だったのはエルロンドだろう。

まぁ本人は最高潮に幸せだが…。



das Ende



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2004/03/30


はい、番外編です。
ヒロインちょっと黒いですね〜…。

まぁ、あのガラドリエルの孫にあたりますし、仕方ないでしょう(ぇ


このあたりでグロールフィンデルがちょっとだけ気づきました。
まだ確信ではないですが。


ちなみに、この話を書いた一番の理由はエルロンドがあまりに出番が少なすぎる!!
と、いう切実なところからでした(汗
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