○●○今年の抱負○●○



「初日の出まであと1時間といったところでしょう」


星の時間を読みながらエレストールが呟く。

冬空の寒い夜。


この館の主であるエルロンドを初め、双璧であるエレストールとグロールフィンデル。

そしてエルロンドの子供に当たるエルラダンとエルロヒア、そして
星のよく見えるバルコニーに出ていた。


寒い外に出ているため温かい紅茶がとても美味しい。

お茶請けの焼き菓子と共にそれらで身体を温めながら
今年初めの日の出を心待ちにしていた。


「皆は今年の抱負などもう決めたのか?」

エルロンドの言葉に一番に反応したのは双子。


「僕らはもうとっくに決まってますよ!」

「そうそう、去年の冬至あたりから考えていましたから」


「「来年の僕らの抱負は一日10オーク!!」」


声を揃えて言う二人に回りは不思議そうな顔。

「一日10オークとはどういう意味ですか?」


グロールフィンデルが尋ねると双子は自慢げに言った。


「つまり、一日10匹以上オークを倒すってこと」

「まぁ、一日50オークでもいいんだけど、二人合わせて100匹のオークを見つけるってのは
 結構難しいでしょ?」

誇らしげに話す双子だが、エルロンドは大きくため息を付きエレストールは怒りの表情。


「お二人は外出禁止令が出ていることをお忘れですか?」


エレストールの静かな怒り。


先日この双子はロスロリアンでちょっとした(?)騒動を起こしたのだ。

そのためエレストールはもうすでに何度目になるか分からない外出禁止令を出すことになった。


「まぁ、そこは僕らの腕の見せ所ってことで」

「見せなくて結構!!」




なんだか頭痛を覚えるエレストール。


「で、貴方は何か考えたんですか?」

今度はグロールフィンデルに尋ねた。


「そうだな、では飲み比べでスランドゥイル王に勝つってのはどうだ?」

「くだらない…」


今度はエレストールがため息をつく番。


「だいたい飲み比べで勝って何の意味があるんですか」



それ以前にスランドゥイルに勝てるエルフなんてこの中つ国に存在するのか?



「卿は何かあるんですか?」

ちょっと凹んだグロールフィンデルは主に尋ねる。


「そうだな、今年は仕事を早めに片付け家族と触れ合える時間を作りたいと思う」

「お父様…」


嬉しくなり抱きつく

何かと忙しいエルロンドは子供達と増えあえる時間が少ない。


だが、家族と触れ合えないということは同時に自分の趣味の時間も少ないということで。


「あと、薬を色々調合できたらいいな」

楽しそうなエルロンド。



だが、過去にエルロンドの薬の犠牲になった双子とグロールフィンデルは青ざめる。




「で、エレストールは何かあるのか?」

「そうですね……やはり平穏に暮らす、でしょうか」


エレストールの豊富に今度はグロールフィンデルが口を挟む。


「なんだ、意外に質素だな」

「豊富が華美でどうするんです?
 だいたい、貴方のように無駄で絶対に無理そうなことを言っても仕方がありません」


絶対に無理、といわれまた微妙に凹むグロールフィンデル。


だが、こればかりはエレストールも気づいていない。

この裂け谷に双子がいるかぎり平穏な暮らしなど、
グロールフィンデルがスランドゥイルに飲み比べてかつ以上に難しいということを。




「では、姫は何かありますか?」

皆の反応を楽しみながら見ていた

急に話を振られて少し驚いた。


「そうね…。本を沢山読むとか?」

「それって前に同じ豊富だった時あったよね」


エルラダンにつっこまれて、もう一度考え直す。


「じゃあ唄や踊りを沢山覚えるとか?」

「それじゃあ普段どおりじゃない?」


今度はエルロヒア。


言われること全て却下されは本気で考え込んでしまった。


「王子達…貴方達の今年の抱負は姫をからかわないに変更なさい」

エレストールの手厳しい一言に双子は肩を竦めて笑う。


「えっと…どうしよう…あたし何も思いつかないわ」

困ったようにエレストールを見上げる。


「姫、そんな無理に考えなくてもいいんですよ。
 ようは心構えのようなものなのですから」

エレストールはそう言ってくれるがは納得できない様子。




そうこうしているうちに谷間から白い光が差し込む。


「ああ、朝日だな…」

冷たく澄んだ空気に差し込む光はキラキラ輝いてとても美しい。


たとえアマンではなくともそれに劣らない美しさはこの中つ国にもある。

皆がその輝きに見入っている時、が急に大きな声を上げた。



「そうよ!これよ!」


「どうしたんですか?一体…」

驚き今度は皆を見入る。


「今年のあたしの抱負!
 今年はこの朝日の光のようにキラキラした笑顔でいるわ!」



そう言うは朝日を浴びキラキラ輝いていた。

それは衰退の一途を辿っているエルフ族に刺す光のよう。









das Ende

2005/01/01



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エルフの暦は人間とは違いますが、とりあえず。

ちなみに毒苺の今年の抱負はマイペースに行く。

去年も同じだった気が…
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