は急いで服を脱ぐと軽く身体に湯を流す。


そして湯船に向かうがすぐには入らない。

の右手には小さなクリスタルの瓶。



そう、をこの姿にした香油が入った瓶である。




それを数適湯船に垂らす。

湯気によってその香りがあたりに充満する。



それは初めて感じた香りとは違う、大人の淫猥な香り。



思わず顔をしかめる。







ちょうど鏡に自分の姿が映る。


そこには美しい曲線美を描いた誘惑的な女性エルフがいる。




「…こんなの…あたしの理想なんかじゃない…」



ゆっくり湯に浸かると手を胸の前に組み、再び強く祈る。









「もとのあたしに戻りたいっ……」














一度小さくパシャンと水のはねる音がする。

と、同時に爽やかな香りがあたりを包む。


ゆっくりと瞳を開けるとそこには強く組まれた小さな手。



そして確かめるように鏡の前にたつ。






「…戻った……」


そこには小さな身体の


男性を魅了するような身体も色香も無い。

でも、沢山のエルフを楽しませ幸せに出来る魅力がこの姿のにはある。









鏡の中の自分に向かってにっこり笑うと急いで湯浴みを済ませ
侍女に出された服を着込む。



濡れた髪もそのままに向かう先はもっとも会いたいと思う人物がいる執務室。



「失礼します!!」




ノックもせずにドアを開け放つと中にいたエルロンドとエレストールを驚いた表情になる。



…戻れたのか?」


驚いているエルロンド。


それもそのはず、彼がほぼ徹夜で医学書を調べ上げあらゆる手を尽くしたが
全く戻らなかったのだから。


「ええ。お父様。」

「どのような方法で?」

「それは内緒です。」




にっこり笑うと、エルロンドはすぐに小さくなった娘を抱きしめ、額にキスをする。





次にくるりと方向転換をして、エレストールの元へ向かう。


首を思い切り上に向けてエレストールと目を合わせる。




「姫…。」


「ねぇ、エレストール。今お仕事忙しいの?」


いきなりのの質問に戸惑うばかりのエレストール。


「…え?…あ……今はそれほどではありませんが…」



「そっか。じゃあ勉強の遅れ取り戻しましょ。」




そう言うとエレストールの手を引きエルロンドに軽く会釈をすると小走りで執務室を後にする。













「姫…一体どうして…それにどうやって戻ったんですか?」


いまだに動揺を隠せないエレストール。

そんな彼には笑顔で言った。



「強く願ったの。元に戻りたいって。そうしたら戻れたのよ。」

いまいち納得していないエレストール。







でも、の笑顔を見ていたらそれ以上追求する気も起こらなくなった。



「一週間以上分溜まっていますからね。覚悟してくださいよ。」





優しく目を細めるエレストール。

それにも笑顔で応えた。









「でも、勉強の前に髪を乾かしましょう。風邪をひかれてしまいますよ。」

そういえば、濡れたままで何もしていないことに気づいた。



一番近場だったエレストールの部屋に行き、柔らかいタオルで髪を拭いてもらう。














「…姫…」


「何?」


「……いえ、なんでもありません…」


「何よ〜。気になるわね。」





クスクス笑うにエレストールもクスクス笑う。




彼が言いかけたその言葉。









“もう少しの間、成長せずこの姿でいてください”












いつかは成長し、成人を向かえ、結婚し、子供を生んで自分の家庭を築くであろう姫。


エレストールはそのことを考えると嬉しさと同時に寂しさを感じる。






この小さなエルフの姫に一番魅了されているのは自分だろう、と苦笑する。
















そしてはというと、例の香油のことは長い年月が流れ彼女の挙式が挙げられる
その時までこのことは黙っていた。


さらに、香油を使うことはやめなかった。


だが、その爽やかな香りに包まれて祈ることは違う。




“あたしの周りにいるエルフたちを幸せに出来るくらい素敵な笑顔になれますように”と。











余談だが、このときから約1200年後におこる指輪戦争。

裂け谷に訪れたホビット達が、幼さを残しつつそれでも美しく成長した
思わず見惚れたということは、このときはまだ誰もしらないこと。











das Ende





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2004/04/11


なんだか無理やり終わらせました…。
グロールフィンデルもう少し出番増やしたかったな〜。


さて、実はこの香油ですが全く何の力も無いただの香油なんです。
でも、母たちからの手紙と自分へのコンプレックスが強かったヒロインが
強く思い込み、それが身体まで変えてしまったというお話。

こうやって説明しないと意味分かりませんね…。



なんだか最近シリアス風味なので次あたりからギャグにしたいですw
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