◆◇◆FIRST LOVE-Another Story3-◆◇◆




「「「「HAPPY BIRTHDAY!!」」」」



夜の裂け谷。

いつもはとても静かで星の瞬きが輝くこの最後の憩いの館。


でも、今日ばかりは賑やかで楽器の音や美しい歌声、そしてエルフたちの笑い声で溢れている。




「とうとう姫も400才を迎えられたんですね。」


グロールフィンデルがしみじみと頷く。


そう、今日はの400歳の誕生日。

作中では全然触れられなかったが、すでにがエレストールに
恋をしてから100年が過ぎていた。


つい100年前はいつも泣いてばかりのも最近ではそれも減り、
見た目も人間でいうところの7、8歳くらいになっていた。


「日に日にケレブリアンに似てくるよ。」



エルロンドもいつも眉間に皺をよせて難しそうな顔をしているが
今日ばかりは嬉しそうに柔らかく微笑んでいる。




父親の彼が言うようには日に日にケレブリアンに似てくる。

いや、もちろんエルロンドの娘だから彼にも似ているところも多いが、
何にせよ美しく成長していることに変わりはない。





エルフのように凛とした美しさではなく、まるで温かい春の日差しのような可愛らしさ。


他のエルフに比べて表情も豊か。

悲しい書物で涙を流し、双子の兄たちの旅先の笑い話で大笑いをする。




容姿も、ノルドールにしては成長は遅いものの、しなやかな四肢に
整った顔立ち。

何より目を引くのが輝かんばかりの銀髪。


だが、そのケレブリアン譲りの銀髪も最近では少し色が変わり、
光の当たり具合では薄いピンクやブルーにも見える。

たとえるなら真珠色。



その髪色は裂け谷だけでなく、遠くロスロリアンにまで評判になっていた。




だが、の評判はそれだけではない。



今まで作中では触れる機会がなかったが、実ははその歌声も評判だった。


歴史を謳ったり、悲しみを癒すための歌ではない。

たとえば鳥たちとおしゃべりをするような弾む歌だったり、
お茶請けのブルーベリーパイが美味しいのでそれを歌にしたり。


他愛もない子供のお遊びだと初めは誰もが思っていた。


だが、ふとある日ロスロリアンでガラドリエルが謳っているときに、
が横で見よう見まねで歌ってみたのだ。


それが、ノルドールとは思えない、透き通った歌声。

長年生きたエルフのように重みのある歌声ではないが、聞くもの全てが癒され、
そして心が洗われるような旋律だった。




過去にノルドールにしてエルフ一の歌い手といえば殆どの者はフェアノールの第二子、
伶人と言われたマグロールと思うだろう。


の歌声は彼と種類こそ違えど、負けるとも劣らない才能があるだろう。


徐々に衰退を向かえつつエルフ族。

その中での歌声は忘れ掛けていたさまざまな喜びを思い出させてくれる。





さて、話は戻るがそんなの成長を祝ってのこの誕生祭。


誕生日2ヶ月くらい前から準備が着々と進められていた。

実は、この誕生の祝いを裂け谷で行うか、ロスロリアンで行うか、なかなか決まらなかったのだ。


なかなか譲らないガラドリエルとエルロンド。

普段はこの義母に頭があがらないエルロンドだが、可愛い娘のため。

必死に応戦(?)した。



そして、この決着はケレブリアンの意外にあっさりとした一言でカタが着いた。


“次の誕生日をロスロリアンでお祝いしましょう”








さて、実は今回話は誕生日の宴が主題ではない。


それは宴の準備の真っ最中のこと。


の不意な一言で始まった。





「あたしは今から400年前に生まれたのよね?」

(準備をサボり中の)グロールフィンデルに問う


「えぇ。そうですよ。ロスロリアンで、皆に期待されて生まれてきたんですよ。」


長年生きているグロールフィンデルにとっては400年前なんてそんな昔ではないため
今でも鮮明に思い出せる。


「…ところで、あたしってどうやって生まれてきたの?」





グロールフィンデルの頭の中を天使が通った。


「…え?」

「だから、子供ってどうやって生まれてくるの?
 まだエレストールから習ってないのよね。」



皆が忙しそうに走り回っている光景をバルコニーから眺めている。

そことは対照的にとグロールフィンデルはのんびりしたもの。


「グロールフィンデルは知らないの?」


「…………」



思わず口をつぐんでしまう。


この400才とはいえ子供のエルフに本当に教えるべきか。

いや、コウノトリが運んできたなんて言って、後々困るのは姫自身。

かといって今適当な答えが浮かんでこない。




そして、グロールフィンデルが言った答えは…


「そろそろ手伝いに行ってきますね…。」



逃げたのだ。











のそんなふとした疑問。


だが、人間でも大して意味も無い疑問が妙に気になることがあるように、
エルフにもそれがある。


この少しだけ成長した姫は、その質問が妙に気になり始めたのだ。



分からない事は質問する。

厳しい顧問長がいつもいうこのセリフ。


いつもその言葉どおり分からない事はすぐにエレストールやエルロンドに質問する。


そして、今日もそれに習ってみた。









次に向かったのは忙しそうに動き回る顧問長、エレストール。


少し申し訳なさげに彼の後ろに回り込み声を掛ける。


「ねぇ、エレストール。」

「姫、いかがなさいましたか?
 何か足りないものでも?」


跪いてと目線を合わせると、グロールフィンデルと会話するときには
考えられないくらい優しい笑顔で言った。


「ううん。違うの。ちょっと質問があるんだ。」


「…?一体なんでしょう?」


彼はおそらく勉強のことだと思っていた。

最近に教えた内容を頭の中に呼び起こす。


だが、から発せられた質問はエレストールの予想の範疇をこえていた。




「子供ってどうやって生まれてくるの?」





博識と評判の顧問長。

だが、そんな彼も思わず止まってしまった。



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