◆◇◆FIRST LOVE-Another Story5-◆◇◆












ここは中つ国にある数少ないエルフの住む場所。


最後の憩い館。


領主エルロンドを初めとする、優秀な武官や文官達が平和と美しい景色を守り続けている。









「いいかっ!決戦はもうすぐだ!今までの訓練を生かすように!!」


朝早くから裂け谷中によく通る男性の声が響き渡る。



それは裂け谷の武官長であり、過去に栄えたゴンドリンの英雄グロールフィンデル。


普段の彼は本当にバルログバスターの異名をもつ高貴なエルフなのか、と
疑問を持つのだが今の彼はまさにその名にふさわしい。

これならあの泉の君、エクセリオンとともにゴンドリンの双璧だったと言われても納得するだろう。



しかし、はいまいち納得いかない。


まだ太陽が顔を出したばかり、鳥が狩を始めるような時間帯。

そんな時間にグロールフィンデルが武官たち総出で気合を入れているのだ。



朝に弱い普段の武官長からはまったく想像が出来ない。




「…グロールフィンデル?朝から何しているの?」


申し訳なさそうに彼に近づくと、グロールフィンデルは武官長らしく
丁寧に礼をする。


「おはようございます、姫」


すると他の武官たちも同時に朝の挨拶をする。



「あ、お、おはよう…
 で、朝から何してるの?武官総出で…まさかオークの巣でも潰しに行くのかしら?」


裂け谷の武官総出ならオークの巣の一つや二つ潰すことはたやすい。


「ははは、まさか。
 もっと強敵が近づいているのでそのために備えているんです」


「もっと強敵?
 …まさかバルログ?」




が不安そうに尋ねるとグロールフィンデルは遠くを見ながらつぶやいた。



「相手がバルログならただ単純に戦うだけでいいので簡単なのですが…
 今回の敵はそうはいかないので…」


いまいちまだ理解できない。


が首を傾げてまた問いただそうとすると後ろから別の人物の声が聞こえた。





「姫。こんなところにいたんですか?」


「あら、エレストールおはよう」



その人物とは裂け谷の顧問長のエレストール。

彼は主の姫と武官たちに挨拶をすると、改めてに向かい話しかける。



「さぁ、姫。
 早く朝食を召し上がってください」

「え?ええ…そうするけど…今日は天気がいいから外でいただきたいわ」



すると彼は異を唱える意味で左右に首を振った。



「いいえ、今日はいけません。
 今日は食事を終了したらご自身の部屋から出るのは控えてください」



エレストールの必死な表情。

彼のこんな表情はめったに見られない。



すると彼はから目を離しグロールフィンデルに声をかける。



「警備は万全ですか?」


「ああ、あたりまえだ。
 任せておけ」


武官たちも自分たちの愛剣を握り締め自信に満ちた表情。


「結構ですね。
 しかし、油断しないように」



なんだかだけ除け者で周りでどんどん話が進んでいるみたいであまりいい気はしない。




「ちょっと!!一体何なの!?一体何があるの!?」


が怒鳴ったことによりエレストールとグロールフィンデルは彼女を見据える。



そして口を開いた。



「「……彼が来るんです……」」
















太陽が真上に上がった頃。


裂け谷の門のあたりに数人のエルフが馬に乗ってやってきた。



彼らは服装から察するに裂け谷のエルフではない。


さらに裂け谷では珍しい金髪。

そう、彼らはシンダールエルフ。




「あぁ、ここが裂け谷なんですね。
 なんと美しい…」


そのエルフたちの中で一番美しい金髪をもつエルフがつぶやいた。



すると奥からエルロンド、エレストール、グロールフィンデルが現れた。



「ようこそ裂け谷へ。
 闇の森の王子、レゴラス殿」


エルロンドの歓迎の言葉にレゴラスは丁寧に礼をした。




「お初にお目にかかります、エルロンド卿。
 闇の森の王、スランドゥイルの息子レゴラスです。」


その燐とした声。

その整った顔は確かに闇の森の王の面影があった。



「エレストール殿もグロールフィンデル殿も、先日はどうも」


エルロンドの半歩後ろにいる二人に笑いかける。

二人は軽く礼で返事をした。




「この度闇の森と裂け谷の国交が行われることになり、私自身大変喜んでおります。
 エルフの衰退が進むこの時に、今こそ我等種族全員が手を取り合い助け合うべきだと考えます」


立派は発言。

さすが王の息子というべきか。



「私もそう思う。また、過去の蟠りもこの国交を通じてとかれる事を期待している」


エルロンドも小さく微笑みながら答えると二人はしっかりと握手を交わした。



「立ち話もなんなのでどうぞ中へ。
 長旅で疲れたでしょう、今はゆっくり休むといい」


数人の顧問官に一度頷くと彼らは客人を館内へ案内する。



だが、レゴラスだけはその案内について行こうとはしなかった。






「エルロンド卿、休む前に姫にお話したいのですが…」


まるで太陽のような輝かしい笑顔。


だが、その台詞にグロールフィンデルとエレストールは身体を硬くする。

一応、エルロンドにはレゴラスがに好意を寄せているとは言ったが、
まさかすでにことが及んでしまった(つまり、唇が奪われた)とは言っていない。


「申し訳ないのですが、王子。
 姫はただ今自室で勉強中です」


エレストールが笑顔で答える。

普段彼は中世的な顔で無表情なのだが、今は普段が嘘だと思うそうになるくらい美しい笑顔。


何も知らない者が見たら男女問わず心が奪われるだろう。


だが、それに屈しないのがこのレゴラス。





「そうですが、でもほんの短い間で結構なのでお会いしたいのですが」


すると今度口を開いたのはグロールフィンデル。



「残念ですが、姫の自室がある別館は血縁者と許可のある次女以外入ることは出来ません。
 また時間を改めてください」


金華公の名に相応しい笑顔。




この裂け谷の双璧の笑顔の前でまだ怯まないレゴラスはやはり大物だ。


「あれ、レゴラス」

「裂け谷に着たんだ」



すると後ろから現れたのは双子のエルラダンとエルロヒア。


彼らは先週くらいからオーク狩りに出ていて今帰ってきたのだ。


「ああ、エルラダン。エルロヒア。
 お久しぶりです」


肩を寄せ合い喜びを分かち合う。


だが、双子は鏡のようなそっくりな笑顔で言った。



「「僕らがいる間、何があってもに手は出させないからね」」



“あはははは〜”と谷中に笑い声が響く。


レゴラスもつられるかのように一緒に笑う。

だが、その碧眼には明らかに何かを企む光があった。



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2004/09/26


長くなりそうなので分けます。

ヒロインあまり出てこないですね…
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