「……え?」


盛大の沈黙の後に出た台詞はレゴラスの気の抜けた声。


「ですから、グロールフィンデルと剣で勝負をして一本でも勝てたら
 あたしもそれ相応の対応をする、と言っているんですよ」


にっこりと笑いながらいう


驚いてるのはレゴラスだけではない。


「姫!何を言っているんですか!?
 相手は闇の森の王子ですよ!!」

止めに入ろうとするエレストール。

だが、ははっきりと言った。



「別に強制ではないわ。
 自信がなかったりするのであれば無理強いはしないし。
 ただ」

ワンテンポ置くとは意地の悪そうな笑顔で言った。



「まぁ、あたしへの想いはその程度だったってことよ」


一歩間違えればの台詞は外交でも大きな問題になる。

だが、この一言がレゴラスの心に火をつけた。




「分かりました、その勝負受けましょう」











場所は武官達が普段鍛錬をしている鍛錬場。


周りは壁に囲まれ少し高くなっておりそこから戦いを見ることが出来る。


普段は武官の様子を見に来たエルロンドやエレストールくらいしかこないこの場所は
裂け谷のほとんどのエルフであふれかえっていた。


もちろんその中には闇の森のエルフたちもいる。

彼らはこの無礼とも取れる状況への抗議を申し立てていたが、
レゴラスの静止の一言で黙らず終えなかった。


だが、この戦いそうやすやすと始めることは出来なかった。




「何をしておる!!」


鍛錬場全体に響く声。

それはここのあ主エルロンド。


「一体これはどういうことだ。
 なぜレゴラス王子とグロールフィンデルが剣をとり向かい合っている!」

明らかに怒気が含まれるエルロンドの声。

それに応じたのは自身。



「これはレゴラス王子が望んだことですわ」

「何?一体どういうことだ?」

「…レゴラス王子はあたしのことを愛しているそうです。
 だから、その心が偽りではないかグロールフィンデルと戦ってもらい確かめるのです」


その台詞にエルロンドは一瞬耳を疑った。

このことがスランドゥイルにばれたら国交の取りやめだけではすまない。

下手をしたらエルフ同士の戦争になるかもしれない。



「いますぐやめるのだ!これは命令だ!」

しかし、それに異を唱えたのはレゴラスだった。



「お待ちください、エルロンド卿。
 このことは姫の仰るとおり私自身が望んだことです」

「な、何を言っているのだ…王子…」

「お願いします」



一点の曇りも無い真っ直ぐな瞳。

エルロンドはそれ以上何も言えなくなっていた。








「それではよろしくお願いします」


レゴラスは愛用の二本の短剣を構えグロールフィンデルに向き合う。


「こちらこそ、よろしくお願いします」

グロールフィンデルも長年愛用している大剣を構え向き合った。



そして一人の武官の合図と同時に剣のぶつかり合う音が響いた。




どちらに分かあるかというともちろんグロールフィンデル。

だが、彼が攻めているわけではない。


必死に攻めているのはレゴラス。

だが、グロールフィンデルはそれを余裕の表情と動作でかわしている。


試合開始から彼は片手に剣を持ちもう片方は動かそうともしない。



「さすが毎日闇の森で大蜘蛛と戦っているだけのことはありますね。
 大した腕です」

レゴラスの剣を交わしながらグロールフィンデルは不適に笑った。



「グロールフィンデル殿こそ、さすが噂に違わぬ英雄。
 剣を交えられることを光栄に思います」

金色の髪を振り乱しながら切りかかるも、それをグロールフィンデルの大剣で
簡単にかわされてしまう。


「ですが、この調子では何年たっても私から一本はとれませんよ」

グロールフィンデルの名前の由来でもある見事な金色の髪は一糸乱れておらず、
息も整っている。


だが、試合開始からずっと攻撃をし続けているレゴラスは息も上がり
綺麗に編み上げられていた髪はところどころ解け始めている。



汗で滑りそうになる剣を再度握り締めて再び切りかかった。

だが、今度は先ほどと違い交わすのではなく、その大剣で思い切り刃をはじいた。


その拍子にレゴラスの細身の体も遠くへ吹っ飛ぶ。



「王子!!」


沢山のギャラリーの中にいる闇の森の従者が心配そうに声を上げる。

打ち付けた背中は一瞬悲鳴を上げたが、いつまでも地面にひれ伏している訳にはいかない。


もしこれが実戦なら殺されてしまうから。



痛む体に鞭を打ちながらようやく起き上がる。


するとグロールフィンデルが感心したように口の端を上げた。




「ちょっとストップ」

試合を再開させようとした時、あたりにのよく通る声が響く。


その声と同時にグロールフィンデルは剣をおろした。



「レゴラス王子、どうなさいます?
 そろそろ降参したらいかがかしら?」


から掛けられたこの言葉。

太陽の位置から考えると剣を交えてからすでに1時間は経っていた。


だが、レゴラスはいまだにグロールフィンデルから一本どころか
かすり傷一つ与えていない。


「いや、まだ…まだ諦めないっ!」


きっと緑葉の象徴ともいえる碧眼でグロールフィンデルをにらみつける。


だが、それはにとって意外な台詞だったらしい。

一瞬面を食らった表情になるがすぐに戻し言葉を繋げた。



「でも、これじゃあいつまで経ってもグロールフィンデルから一本なんて無理ですね。
 だから、彼に傷一つでも負わせたらレゴラス王子の勝ち、それでいかがでしょう?」


もしかしたら、望みがあるかもしれないとおもえるこの条件。

だが、それは大きな間違いである。



今までの戦いから考えても傷一つつけることすら年若いレゴラスには難しいのだ。


一度滅びた身とはいえ、グロールフィンデルの剣の腕は歴代のエルフでもトップクラス。

剣の師があの泉の君、エクセリオンなのだ。


現存するエルフの中でグロールフィンデルと『比較的』対等に戦えるのは
ロスロリアンの警備隊長のハルディアくらいだろう。



だからこそ、レゴラスにとってはやりがいがある。

しかし、無情とも言うべきかはさらに難題を言いつけた。



「ただし、いままでグロールフィンデルは防戦一方でしたが、
 今度は攻撃にも出てもらいます」

それには闇の森のエルフだけではない、エレストールやエルロンドからも声が上がった。


「姫!いい加減にしてください!
 そんなことをしては王子も怪我だけでは済まない可能性が…」

しかし、は表情を変えずに言った。



「だから、強制ではないわ。降参したかったらしたっていいのよ」


“それに”とワンテンポ置くとはレゴラスの方を見た。


「攻撃に出るということは多少なりとも隙ができるということです。
 レゴラス王子にも多少は望みがあるのではなくて?」

確かに言っていることは的を射ている。

だが、相手は英雄グロールフィンデル。


彼の隙を見つけるなんて戦場で針の穴を見つけるようなもの。


そのことは剣を交えたレゴラスが一番分かっている。



「分かりました。よろしくお願いします」



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2004/09/28


これ書いてて忘れそうになるんですが、ヒロインほんの子供なんですよね…。

ちなみにレゴラスはだいたい人間でいう16〜17歳くらいで考えています。
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