◆◇◆FIRST LOVE-Another Story6-◆◇◆











今から数百年も前の話。

裂け谷の主エルロンドに第四子なる子供が生まれた。


その名は


エルロンドにとっては1000年以上ぶりの子供。

子供の少ないエルフにとってはこれ以上無い吉報だ。


しかもエルロンドにとってさらに嬉しい事はを裂け谷で育てることができるということ。


今までエルラダン、エルロヒアもアルウェンも皆成人するまでロスロリアンにいた。

そのためエルロンドは我が子の成長する過程を間近で見たことが無い。



髪の色、肌、瞳の色は妻のケレブリアンに似ているが
顔立ちは何処と無くエルロンドに似ている。


その愛くるしい表情にエルロンドだけではなく裂け谷中のエルフが頬を緩めた。








比較的泣く事が少ないはエルロンドの執務をそれほど妨げることは少ない。


「どうした?、その人形が気に入ったのか?」

エルロンドがを抱き上げると柔らかい頬に擦り寄りキスをする。


そんなの手には双子が人間の町から買ってきたらしい謎の人形が握られている。

姿形は結構不気味だが赤子には格好の興味の対象。


おそらく頭と思われる部分を握り潰され、手と思われる部分は
のよだれでべたべたになっている。


幸せそうにを抱き上げているエルロンド。

だが、その傍にいるエレストールは眉間に皺を寄せていた。


「…卿……やはり執務室に姫を置かれるのはどうかと思うのですが……」

「何故だ、エレストール。
 を一人にしておいては可哀想だし、第一何かがあったら…」

「ですから、姫には侍女が数人いるでしょう。
 彼女たちに任せたら良いでしょう」


呆れ気味のエレストール。


「し、しかし…が寂しがるだろう?」


むしろ寂しがっているのはエルロンドだろう。


エレストールは大きくため息をつくとはっきりと言い放った。

「いいですか、卿。
 先日重要な書類を姫がよだれだらけにしたのは覚えておいででしょう?
 それも一度二度ではないはずす」


それにはエルロンドも反論できない。

「それに、姫が傍にいては卿の集中力は極端に落ちます。
 執務終了後はいくらでも姫を抱き上げてくださってもよろしいですが、
 そのためにはやることはきちんとやってください!」


が握り締めていた人形がべちゃ、と不穏な音を立てて床に落ちた。

それと同時に執務室の扉が開き、グロールフィンデルが現れる。



おそらく武官たちの訓練中だったのだろう、首や額に数滴汗が光っている。


「エレストール、外まで聞こえているぞ」

「グロールフィンデル……何の用ですか?」


あからさまに嫌そうな表情のエレストール。


「別にエレストールに用事は無い。
 私は姫に用事があったのだ」

そう言うとグロールフィンデルはエルロンドに抱かれたに近づき
髪を撫でたり頬擦りしたりする。


「グロールフィンデル。そんな汚れた格好で姫に障らないでください。
 無礼もいいところです」

ひょい、とを取り上げるエレストール。


「卿もです。さっさと仕事をしてください。
 本日の執務が終り次第姫をお返ししましょう」

「何っ!?」

焦るエルロンド。

「せ、せめて私の机の横にを…」

「いけません」


ぷいっとそっぽを向くとを連れて外へ出ようとするエレストール。


だが、扉の取っ手に手を掛ける彼を妨げたのは
“汚れた”とはっきり言われたグロールフィンデル。


「エレストール、そういう君こそさりげなく姫を連れてサボろうとしているではないか」

「は?何を言っているんですか?私は少し散歩をした後侍女に預けようと思っていたんです。
 サボるなんて、貴方じゃあるまいし」

「毎回毎回わざわざ頭にくる言い方をするな。
 そんなことだから双子に恐れられて勉強の時間に逃げられるのだぞ」

「貴方のように武官長のくせになめられるくらいなら恐れられたほうがマシです。
 だいたい、貴方の作った書類は何ですか!?
 子供のラクガキかと思いましたよ」

「君のようにすべてを真面目腐って書いていては気がめいるだろう。
 そんな気遣いも気づかないのかな?氷の顧問長殿は」

「仕事にそんな気遣いは無用です
 ひよこ頭の武官長殿」


延々と続く武官長と顧問長の言い争い。


エルロンドはまたか…とため息をつき諦めて執務をこなし始めた。




そう、赤子のがすっかり成長した頃にはこの裂け谷の双璧は
憎まれ口を叩くもののなかなかのコンビネーションを見せている。


だが、この頃はまさしく犬猿の仲。


もともと性格も考え方も正反対の二人。

合うわけが無いのだ。


初めのうちはエルロンドもはらはらしながら二人の言い争いを見ていたが、もう慣れたもの。


紅茶を飲みながら黙々と書類を処理する、



いつまでたっても終らない二人の言い争いだが、これが終るきっかけが実は二人の間にある。


大きな瞳でぼ〜っと言い争っている二人を見上げている

口をぽかんと開けているせいかよだれが垂れそうである。


だが、そのぽかんとした表情も段々ゆがんで来る。


「…うっ……ひっく…ひっく…あんぎゃぁぁぁぁぁ!!!」


まるで怪獣を髣髴させる泣き声。

聴覚の優れたエルフにはきつすぎる。

そんな泣き声、むしろ爆音が聞こえてはエレストールとグロールフィンデルは
言い争いをやめるしかない。


「ひ、姫…泣き止んでください…」

「み、耳が…」


だが、一向に泣き止む気配がない。

困り果てる二人に、一人黙々と仕事をしていたエルロンドが立ち上がる。


ひょい、とを取り上げると
泣いてしゃくりあげているの背中をぽんぽんとたたき宥める。


「私はを大人しくさせた後寝かせてくる」

そう言って執務室を出ようとする。


「お、お待ちください卿!仕事は…」

「今日の急ぎの分は終った。残りはを寝かせてからだ。
 エレストールのチェックが必要な分はまとめてある」


“じゃあ、頼んだぞ”とその場を後にする。


静まり返った執務室にとりこのされた二人はお互い一睨みすると
お互い席に戻り仕事をし始めた。


もちろん会話はひとつも無い。



←戻る
2へ→


2004/12/06


エレストールとグロールフィンデルの話。

今でこそ仲の良い(?)二人ですが初めは絶対仲が悪かったはず…

と思い書いてみたこの話。


ヒロイン…よだれ出しすぎ…


2005/03/31

すみません…この話アップし忘れてました…。
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送