◆◇◆FIRST LOVE-Eighth Story-◆◇◆















ここはエルフの都ロスロリアン、カラス・ガラゾン。


金と銀に輝くマルローンの樹に囲まれたここはまさにエルフの都の名に相応しい。


そして、シンゴルの血縁者ケレボルンと、その奥方ガラドリエルがこの美しき都を統治していた。





とても静かでまるで時が止まったかのような空間。

聞こえるものと言えば水の流れ落ちる水音と風の音、そしてふと聞こえる歌声。



この清浄なる環境にいるとそれだけで身も心も洗われる。




だが、ほぼ永遠といえる時を生きるエルフ。

こんなに美しい場所だって飽きる時がくる。



「あ〜退屈だね、エルロヒア」

「本当だね、エルラダン」




今日はケレボルンやガラドリエルの手紙によって、普段裂け谷にいる
エルラダン、エルロヒア、そしての3人はロスロリアンに遊びに来ていたのだ。



久々に会った祖父母や母、そしてアルウェン。

その日は夜通し歌を歌ったり踊ったりして再会を喜び合った。




だが、エルロンドの息子であるこの双子。


趣味がオーク狩りと言うだけあり一箇所に長い間留まることは出来ない。


過去に放浪癖の血縁者を持つだけありその性格も否めないところだが、
これはいつの時代も従者や顧問長の頭痛の種だったりする。



「オーク狩りに行きたいね」

「だめだよ、ハルディアに怒られる」

「ハルディアって怒ったらグロールフィンデルよりも怖いよね」

「でもエレストールよりはマシかな」

「あはははは〜、分かる分かる」

「でも本当に暇だよね〜…」



「…お兄様方……」

双子の兄たちのくだらない言い合いにとうとう読んでいた本を閉じが口を挟む。

「いい加減にしてください。
 せっかくロスロリアンにいるんですよ」

「でも退屈なのには変わらないよ」

「いくらエルフでもこう退屈だとマンドスの館に行っちゃうよ」


“あきれた…”と表情で訴える





「また前みたいにアマンにタイムスリップしてみたいね」

「あ、いいね〜。大変だったけど楽しかったよね」


以前裂け谷の秘蔵書庫の奥の部屋に忍び込んだ際何故だか分からないが
第一紀以前のアマンに行ってしまった3人。

そこではかの有名なフェアノール一家と出会い数日間ではあるがともに生活までした。


「何仰ってるんですか!彼らはもう亡くなった方々なんですよ!
 それに、たまたまマエズロス様が優しい方だったから良かったですけど、
 下手したら殺されていたかもしれないんですよ!」


の言い分は最もだ。

燃えるような赤い髪を持つマエズロスは意外にもとても優しく紳士な男性で。


もし何の争いもなく現在も中つ国にいたなら沢山の乙女達が彼に想いを寄せただろう。



「でも、殺されなかった一番の原因はやっぱり…」

「ネアダネル様、だよね」


双子の呟きに、今度ばかりはも同意を示す。



唯一女性としてフェアノールに愛され、エルフにして最高の人数の子供を生んだネアダネル。

マエズロスと同じ燃えるように赤い髪は今でも美しい色と定評がある。



「まさかあのフェアノール様があんなにネアダネル様に弱いとは知りませんでした…」


まぁ、エルフにしても人間にしても惚れた弱み、というものがあるのだろう。





「……今不吉な名前を聞いたような気がしたのですが……」


3人が楽しく談笑していると後ろからいきなり聞こえてきた低めの女性の声。

思わず悲鳴をあげたエルラダン、エルロヒア、



「が、ガラドリエル様…」

「今、とても不吉な者の名前を聞いた気がしましたが…」


不吉という彼女の表情はとても恐ろしい。

さすが偉大なエルフの中の一人と言われるだけある。



「き、気のせいですわ…」

冷や汗を掻きながらは誤魔化してみるが、
心まで見透かすような祖母の強い瞳に負けそうになる。


3人は無意味に姿勢を正して黙りこくっていると、ガラドリエルは小さくため息をついた。



「まぁ、わらわの気のせいだったということにしましょう」


そう呟くと再び音も立てずにその場を後にした。



ガラドリエルの姿と気配が完璧になくなると一気に身体から力が抜ける。


「あ〜…びっくりした〜…」

「本当、マジ怖かった…」

「でも、なんであんなに反応したんだろう?」


双子の疑問には少し苦笑いをして答えた。




「…以前聞いたんですけど、ガラドリエル様はフェアノール様が大嫌いだったらしいんです」

「どうして?」

「やっぱり…フェアノール様って強引なところもあるのでそのような態度に
 嫌悪されていたと聞きましたが…」


だが、ここまで言うとはさらに声のトーンを落とした。


「実は、アマンにいた頃フェアノール様はガラドリエル様の髪を所望したそうです」


そう、史実には残されていないがフェアノールは彼の父フィンウェが息子3人を集めた際、
三男フィナルフィンの娘ガラドリエルの髪に目が付いた。


後妻の息子達であるフィンゴルフィンとフィナルフィンを嫌悪していたフェアノールだが、
それ以上に彼は技師としてアマンの2本の樹を連想させるガラドリエルの髪を美しいと思ったのだ。


ぜひ、これを自分の作品に用いたい。


そう思い彼はガラドリエルに髪を一房所望したが。



人一倍、いやエルフ一倍プライドの高いガラドリエル。


そんなことを受け入れるわけもなく3度の要求に一度も応じたことがなかった。



「だから、ガラドリエル様はフェアノール様が嫌いなんだそうです」


“へ〜”と双子は面白そうにの話を聞き入っていた。


「やっぱりさ、歴史もこういう裏話もあったら楽しめるんだよね」

「そうそう、エレストールにも提案してみよう」


おそらく、いや、確実に却下されるだろう。



「あ〜でもやっぱりまたタイムスリップしてみたいな」

「そうだよね、何だかんだ言ったって楽しかったし」

「その楽しさのために命を掛けるつもりはありません」



やはり否定するに双子はにやりと笑う。



「そういえばさ、ガラドリエル様の水鏡っていろんなモノを映すんだよね?」

「じゃあ過去も映るかな?」



双子の提案には嫌な予感がする。



「じゃ、早速試してみよう」

「おっけぇ〜」


勢い良く立ち上がる双子。


ついでにの両腕を捕獲する。


その姿はまるで宇宙人捕獲。



「ち、ちょっと!何するんですか!?」

も一緒に行こうよ」

「きっと楽しいよ」

「大丈夫だって、何かあったら僕らがを守るから」



ずるずると引っ張られる


「放して〜!!」





さて、ガラドリエルの水鏡の台座がある間に来た3人。


静かに流れる水の音に心が安らぐ。

そして、中央にある盆。


細かい細工が施された盆は銀色に輝いて美しい。


先日ガラドリエルが水鏡を覘いていたため水も張ってあった。


「さて、早速覗いて見よう」

わくわく、という擬音が聞こえてきそうな双子。


盆に張ってある水鏡を覗いていた。


だが、そこに映るのは同じ顔が二つ。

それ以外は何も映さない。


「やっぱりガラドリエル様の力をお借りしないと何も映らないんじゃないですか?」

「え〜、残念…」


せっかく楽しいことを見つけたのにすぐにそれが失敗だったと分かる。


「では、戻りましょう。
 ここにいてはまたガラドリエル様に怪しまれますよ」

「ちょっと待って、も覗いてご覧よ」

「え?」

「そうそう、ほら、おいで」


エルロヒアに引かれて盆の前に立たされる。


出来れば早めにここから立ち去りたいが、それでは兄たちは納得しない。

覗き込んでさっさと戻ろう。


そう言い聞かせ水鏡を覗き込んだ。




やはり映っているのは自分の顔とそれ以外は何もない。


「やっぱり何も映っていませんよ…」






そういいかけたとき一瞬水面が揺らいだ。

そのゆがんだ水鏡に映ったものは白い城壁。



「え…」

驚いて身を屈めて水面に身体を近づける

それに伴い長い髪が水面についてしまった。



すると辺りがとてつもない光に包まれる。


「きゃぁぁっ!!」

「「!!」」


エルラダンとエルロヒアの声が聞こえる。

この感覚に覚えがある。


そう考えると3人はそれぞれの手を光の中で取り合い意識を手放した。












優しい風が頬をなぞる。


辺りから聞こえてくるのは鳥の囀りだろう。


「…んんっ…」


頬に感じる草の感触をくすぐったそうにするとはゆっくりと瞳を開いた。


「ここは……」

ぼぅっとする頭を抑えながら必死に考える


ガラドリエルの水鏡を覗いて、そしたら急に光に包まれて。



そこまで思い出しての血の気が引いた。


「ま、まさかまた…?」


冷や汗が頬を伝う。


左右をみると兄たちが倒れていた。


「エルラダンお兄様!エルロヒアお兄様!起きてください!!」

大きく二人の肩を揺さぶると二人は小さく身じろぎをして瞳を開けた。


「ん…ここは…」

双子の兄たちもと同じ反応を示す。



「確実にロスロリアンではないですよね…」


辺りを見回すと近くに白い大きな門がある。


「アマン…でしょうか?」

「でも、これって太陽の光だよね?
 じゃあやっぱり中つ国じゃないかな?」

「白い城壁だからゴンドールかと思ったけど、それとも違うみたいだし」


とりあえず混乱する頭で必死に今の状況を考える3人。




すると後ろから声が聞こえてきた。


「何者だ!!」

明らかに怒気を含んだその声に肩を竦め3人はその声のするほうをゆっくりと振り向く。




そこに立っていたのは見事な銀色の髪をもつエルフの青年。


海のように澄んだ青い瞳をもち、肌はまるで雪のように白い。


微笑めば女性顔負けなくらい美しいであろう。

だが、彼は今明らかにたちに敵意を示していた。



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2004/11/02


はい、久々の更新です。

今回はタイムスリップinゴンドリン。


前回のフェアノール家より真面目要素が多いかもしれません。

とりあえず今回は若いグロールが出てくるということで楽しみですw

ちなみにラストの銀髪の彼はもちろんあの人です。


でも彼って銀色なのは鎧だけだったような…まぁ、いいでしょう。


余談ですが、ロスロリアンに遊びに来た双子とヒロインですが、
エルロンドはエレストールの監視のもと仕事をしています。
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