「…う……ん…」


頬に冷たさを感じはゆっくりと瞳を開けた。

いまいち状況がつかめない。


今まで石の地べたに直接横になっていたせいか体温が奪われ身体も痛い。

また、おそらく薬のせいだろう、頭が朦朧とする。


まだはっきりとしない頭でいままでの出来事を思い返す。



そう、今はなぜかゴンドリンにいて沢山のエルフに追いかけられていたはず。


そこまで思い出すとは一気に起き上がる、が
脚に激痛が走り再び地面にひれ伏した。



!」

「起きたんだね」


目の前にはそっくりな双子の兄。

彼らは安心したようにをかわるがわる抱きしめた。

「お兄様たち…ご無事だったんですね…」

「無事…うん、まぁ…無事って言ったら無事なのかな?」

「まぁ、殺されていないだけマシだよね」


そう言うと二人は殴られた後頭部を同時になでた。



「それより、脚は大丈夫?」

「ちゃんとした手当てが出来なくてごめん」


二人にそういわれて足元を見てみると、
調度弓を射られた部分に長衣の一部と思われる布が巻かれていた。

だが、その布の一部を自分の血が赤く染めている。


「手当てをしてほしいといったんだけど…」

「正体も分からない捕虜に手当てをすることはできないって…」


二人は悔しそうに呟いた。


確かに傷口は傷む。

恐らく血もまだ止まっていないだろう。


でも、そんな様子を見せたら二人を悲しませることになる。

はあえて気丈に振舞った。

「大丈夫です、全然痛くないですから」

そう言って笑顔を見せると二人に感謝の意をこめて頬にキスをした。



「それにしてもここはどこですか?」

「おそらくっていうか…絶対地下牢だよね」


周りは石造りになっていて天井はずっと高い。

そのはるか上に鉄格子のついた小さな窓がありそこから光の筋が入り込んでいる。


「でも、どうして処刑されなかったのかしら?」

あんな状況ではその場で殺されても不思議ではない。

「そうなんだよね…僕らも気が付いたらここにいたから」

「で、近くに見張りのエルフがいたから聞いてみたんだけど…」


そう簡単に教えてくれはしない。

エルラダンとエルロヒアは同時に肩をすくめた。



「……それで、これからどうしましょう…」

どうにかしてロスロリアンに帰らないと。

しかし、どうやってここに着たかも分からないのに帰り方なんて分かるわけがない。


「帰り方の前に、やっぱり身の安全を確保しないと…」

そう、今現在だっていつ処刑されてもおかしくない。


裂け谷では迷い込んできた人間や動物達は歓迎して迎え入れる。

あそこは避難所のようなところなのだ。

悪を持ち込むような者でないかぎり追い返したりはしない。



だが、このゴンドリンは外敵から完全に離れることにより平和と秩序を確保している。


だから、ゴンドリンのエルフ達がもっとも恐れるのは外界からの侵入者なのだ。


「とりあえず、その場で殺されないでこうやって地下牢に閉じ込められているってことは
 多少なりとも弁解をするチャンスがあるってことだろ?」

エルラダンがにやりと笑った。


「ここは、どうにかして命を助けてもらえるような話をして生き残らないと…」


エルロヒアも同じような表情で笑った。

「でもどんな……」


「「そうだな〜…」」


う〜んと唸る三人。


するとしっかり施錠をされた扉の前に数人の気配を感じる。

エルラダンとエルロヒアはを守るようにとっさに身構える。



がちゃがちゃと鍵を開ける音が聞こえて、ぎぃっと渋い音と同時に扉が開かれた。


そこに立っていたのは4人の武官のようなエルフ。

先ほどの銀髪の青年ではない。


彼らは警戒するように剣を抜いてたちに突きつけた。




「我等の王が面会を要求している。
 さっさと来るんだ」


一人がそう言い放つと残りの3人がたちの後ろに付き立たせる。


「早く立つんだ!」

「きゃぁっ!痛いっ!」


脚を怪我している上にまともな手当ても出来ていない。

そんなを気にせずその武官のエルフは腕を無理に引っ張り上げ立たせようとする。


!」

「乱暴にするな!」

エルラダンとエルロヒアがそのエルフに飛び掛ろうとする。



だが、二人についていたエルフが即座に押さえつける。

「大人しくしろ!」

「隊長から暴れるようならその場で殺してもかまわないと言われているんだ」


二人の首筋に剣の刃を突きつけられる。



だが、それにもひるまないエルラダンとエルロヒア。

まったく同じ表情でに腕に掴みかかっているエルフを睨みつける。



「僕らは大人しくしよう、だがは怪我をしているんだ」

「抱えて行って構わないだろう?」


剣を突きつけられているにも関わらず二人は怯まない。


武官のエルフたちは目で合図を交わすと小さくため息をついて答えた。

「分かった、だが少しでもおかしな真似をしたら即座に切るかなら」



そう言うと二人を押さえつけていたエルフが剣を戻す。


「お兄様…」

、大丈夫?」

「僕が運んであげるから、辛いと思うけどがんばって」


優しく微笑むとエルロヒアがを優しく抱き上げる。

もエルロヒアの首の後ろに手を回し、その優しい腕と体温に落ち着いた。


「ありがとう…ございます…」


エルラダンもの前髪を掻き揚げるとその額にキスをした。


そして3人はエルフたちに連れられてその地下牢を出た。




の怪我を気遣ってかゆっくり歩くエルロヒア。

もちろんエルラダンも気遣ってくれる。




地下を出て王の謁見の真へ向かう途中、本当に沢山のエルフとすれ違う。

たちに警戒の視線を向けている。


はその視線に耐え切れずエルロヒアの胸に顔を隠すようにうずめた。




しばらく広い城内を歩いた。

本当に広く、何処もかしこも美しい彫刻や美術品で溢れている。



その中で一番奥にあり、今までで一番大きくそして重厚な扉の前に立った。



たちを連れてきたエルフが声を掛けると中にいたのであろう侍女が
その重厚な扉を左右に開いた。






中はとても広く、輝かんばかりの光に溢れている。

真ん中を通る真っ赤な絨毯。

その先には数段の階段があり、そこには天蓋が降りている。



その天蓋の間にある二人掛けようの玉座。

それに一人のエルフが座っていた。



そう、フィンゴルフィンの息子にしてこのゴンドリンの王、賢者トゥアゴン。


たちの血縁者と言っても、歴史書でしか知らない。


グロールフィンデルの前の主でもある。




たちを連れてきたエルフがトゥアゴンの前に跪き状況を説明する。

その後達は王の前に立つことを許されたらしく玉座前の段差まで連れてこられた。



改めて見るトゥアゴン。

本当にこの国を統治しているのかと驚くほど優しい顔立ち。

瞳もノルドールらしく澄んだ灰色をしている。


だが、座っていても分かるくらいの長身。

もしかしたらグロールフィンデルより高いかもしれない。


「ご苦労、さがってよいぞ」

たちを連れてきたエルフたちを労う。

彼らは言われたとおり一礼をするとその場を後にした。





は相変わらずエルロヒアの腕の中。

上級王の前にいて跪かないのは礼儀知らずにもほどがある。


だが、トゥアゴンはそれをとがめるような様子はなかった。



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2004/12/05


とりあえずきります。

次はトゥアゴンとの対話。


双子をお兄さんっぽく書きたかったけど玉砕…
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