するとトゥアゴンは扉を開けた侍女に声を掛ける。

「椅子を一脚たのむ。
 その少女は脚を怪我しているのだろう?」


たちは驚いた表情でトゥアゴンを見上げる。

声を掛ける前に椅子を持ってきた侍女がエルロヒアの横に静かに置く。


意外な扱いにたちは戸惑うばかり。

とりあえず、をその椅子に降ろす。


エルロヒアの腕から離されて少しの不安を感じる。

それを分かってか右にエルロヒア、左にエルラダンが立ち
それぞれがの手を握り締めた。


そして改めて目の前にいる上級王を見上げた。


「まず、部下が君たちの妹君を傷つけたことを詫びよう」

だが、すぐに手当てをしないところをみると多少なりとも疑惑の目を向けているのだろう。


「さて、まず君たちの名を聞かせてもらおう」


三人はそれぞれを視線を合わせるとゆっくりと口を開いた。


「エルラダン…」

「エルロヒア…です…」

「………です…」


ふむ、と一度唸るとトゥアゴンは改めて3人を見る。


「珍しい…双子か。
 そっくりで見分けがつかないな」


さて、とワンテンポ置くととうとう本題に入った。


「で、君たちはどこからこの国へ入った。
 そして、君たちはどこからきたんだ」

とうとう来た、この質問、と身構える3人。


そしてとっさに言葉を発したのはエルラダンだった。


「実は…私たちは…流浪のエルフなのです……」

そこ作り話にとっさに乗ったのはエルロヒア。


「そうなんです…まだ、このが赤子の頃私たちの住んでいた国が焼かれ…
 国と両親を失った私たちは流れるしかなかったんです…」


両親どころか祖父母も健在のくせによく言えるな、とは思わず感心した。



「そしてもう数百年も流れました…。
 …そんなとき、が攫われたんです…」


はぁ!?と驚くしかない

しかし、ここで口を出しては二人の嘘も水の泡。

さらに、嘘をついていたとバレたら間違いなく殺されるだろう。



ここは慎重にならないと。


「心無い人間の一部にエルフを攫って見世物にする輩がいると聞いたことがあります…。
 おそらく彼らだったのでしょう…」

「必死になってを追いかけ探し出しました…。
 そして、ようやく見つけ出した時、は縛られ見世物にされていました…」

「幸いまだ穢されていないようでしたが、私たちがあと一歩遅ければどんな恐ろしいことに…」


よくこんなでまかせが言える、と呆れ気味の


そういえば、この話どこかで聞いたことがあると思ったら、
以前書庫の奥深くにあった書物。

人間の少女が村を追われ、山賊に捕まり見世物にされ
最後は自分の身体を使って生き抜くという話。


だがエレストールにこの本を読んでいる最中に見つかり

『この本はまだ姫には早すぎます!!』と怒鳴られたのは記憶に新しい。



ちなみにこの話はどんな窮地に陥っても強い心を持ち生き抜いた、
身体をどんなに汚されても気高い精神を持ち続けた女性の話。

また、さらなる教訓は女性がこんな恥辱の中生き続けなければならない世の中にした
統治者への嫌味でもあった。


たしかに、下世話は本ではないのだが未だに性について正しい知識がないには
まだ早すぎるというエレストールの判断は正しい。




元ネタはおそらくあの本だろう、とは二人の話を聞き入った。


「そして私たちはいろいろな困難に出会いました。
 そんなとき、私たちの目の前に大きな鷲が降り立ったのです」

「するとその鷲は私たち3人をその鉤爪で掴み空高く舞い上がりました」


「「そしてたどり着いたのがこの国なのです」」




さすが双子と、同時に言葉を放ち締めくくった。


いつもエレストールに叱られないために嘘をついて言い逃れようとする二人。

この鍛えられた(?)演技力に何処からか女性エルフの哀れに思う声も上がる。



無表情で二人の話を聞いていたトゥアゴンだったが全て話を聞き終わり改めて尋ねた。



、と言ったな、そなたにも聞いてみたい。
 そなたは人間に攫われた時、どうだった?言ってみよ」

普段から嘘をあまりつかない

一瞬困った表情をする、が、黙っていてはまずい。

あまり表情には出さないが、エルラダンとエルロヒアが焦っているのが分かる。


は意を俯いて涙を流し始めた。


「ご…ごめんなさい……あんな恐ろしいこと…口に出すのも…
 思い出すだけで……この身が引き裂かれそうになります………」

両手で顔を覆い涙をこぼす。


心の中では上級王に嘘をついてごめんなさいと、
ヴァラールやエルロンド、ケレブリアンたちに大いに謝っていた。




辺りからは賛否両論。

嘘だ、と言うものもいればこんな子供になんて酷い、というエルフもいる。



「静まれ!」

トゥアゴンが一言上げるだけで回りは一瞬にして静まる。

彼はゆっくりと玉座を立ち上がり段差を降りるとの前に立った。



そして泣いているの両手をゆっくりと剥がすとその手を握り締める。

「さぁ、泣いていないでそなたの顔を見せておくれ」

そう言うとトゥアゴンはの前に跪きその顔を見上げる。


「トゥアゴン王!一体何を!」

周りにいるエルフは王が跪いている様子に驚くばかり。

だが、当のトゥアゴンは気にしていない模様。


はゆっくりと彼の瞳を見た。

「あぁ、本当にそっくりだ。
 エクセリオンが驚くだけのことはある」


嬉しそうに語るトゥアゴンと良く分からない

もちろんエルラダンとエルロヒアだって分かっていない。



「いや、そなたが我が娘、イドリルにそっくりだと聞いてな。
 それで会ってみたいと思っていたんだ」

「…イドリル姫に?」

「ああ、イドリルはもう成人をしてしまったが、あれの幼い頃にそっくりだ。
 その髪が金で緩やかな波を描いていればまさしく瓜二つだろう」


トゥアゴンは嬉しそうに語り始めた。



だが、にとっては寝耳に水。


自分の大祖母に似ているなんて。


「あ、あの…トゥアゴン様?」

マジマジと見入られてはも居心地が悪い。


「あれとそっくりな顔で泣かないでおくれ」

そう言うと頬に伝った(嘘泣きの)涙を指先で拭う。



悪い印象はない、そう思うとエルラダンとエルロヒアが口を挟んだ。


「あ、あの…王。私たちはどんな仕打ちも受けましょう」

「変わりにの脚の手当てと、身の安全の保障をお約束していただけませんか?」


今までの御託はいいとして、二人の一番の願いはこれだった。

だが、これではが黙っていない。


「お兄様方!?何を仰っているんです!?あたし一人だけなんて…
 トゥアゴン王、あたしより兄二人のことをお助けください…」

「何を言っているんだ?
 第一を残して僕らが助かっても嬉しくもなんともない」

「それにそんなことになったら父上たちに合わせる顔をもないし、
 エレストールに怒られるだけじゃすまないよ」

「そんなことを言っても…あたしだって一人無事でもお兄様方がいないんじゃ
 全然嬉しくもないし幸せになんてなれません!」

「大丈夫、きっとレゴラスが幸せにしてくれるって」

「そうそう、レゴラスだったら何があっても守ってくれるから」

「はぁ!?なんでレゴラスなんですか!?
 第一あたしはエレストールのことが…」

「え?ってまだエレストールのこと想ってたの?」

「僕、もうとっくに諦めてると思ってた…。
 と、言うよりレゴラスのほうが絶対良いって」

「だから、なんでレゴラスなんですか!?
 レゴラスはただの友達です!前にそう言ってお互い納得したんですから」

がそう思っていてもレゴラスはそうじゃないだろ」

「そうそう、絶対まだのこと好きだって」

「困ります!あたしはエレストールが…
 だいたい、お兄様たちだってレゴラスがあたしを好きって知ったら邪魔してたじゃないですか!」

「そりゃそうだよ、可愛い妹がもうお嫁に行くかと思ったら邪魔するに決まってるだろ?」

「でも、将来的に考えてエレストールが僕らの義兄になるよりなら
 レゴラスのほうが良いって思ったんだよ」

「ち、ちょっと待ってください!誰が義兄って…
 だ、第一エレストールと結婚なんて…そんな……」

「あ、ってば真っ赤〜」

「可愛い〜」

「いい加減にしてください!!怒りますよ!!」


目の前で繰り広げられる兄弟げんか?
もとい、エルラダン&エルロヒアの遊び


ずっと黙ってみていたトゥアゴン王だが、いきなり大笑いし始めた。

それに驚いた3人。

そして、今実は命が危険に晒されていることを思い出す。


だが、当のトゥアゴンは全然気にしていないようで。


「そなたたちは面白いな。
 気に入った、3人の身の保障はしよう」

それに、とトゥアゴンはにっこりと笑っていった。


「まさか私がイドリルそっくりなこの娘を処刑できるわけなかろう」


そう言うとトゥアゴンは玉座に戻り高らかと宣言した。


「よかろう、この3人の者たちをゴンドリンに置くことを許可する。
 エルラダン、エルロヒアは武官として。は文官として。
 異議の申し立ては許さん!」



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2004/12/05


なんだか長くなりまして・・・またもやきります。

てか、撮り溜めしてたバク天見ながら書いたせいかギャグなんだか
何なんだか良く分からなくなってきた。


てか、この作り話矛盾だらけだな〜…
はしょり過ぎた…(「はしょる」って方言か?
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