これにはたちだけではない、周りのエルフたちも驚いた。


まさか侵入者をこのゴンドリンに置くなんて。

ましてこんなあからさまな不審人物なのに。


だが、トゥアゴンはあえてそのことは聞き入れず天蓋の影にいた二人のエルフに声を掛ける。


「グロールフィンデル、エクセリオン。二人があの双子の指導を」


するとその天蓋から二人の金色を銀色のエルフが顔を出す。

銀色の方はの脚を射抜いたエルフ。


そしてもう一人は…


「グロール…フィンデル……?」


3人は驚いたように目を見開いた。


彼は現在たちの住んでいる裂け谷の武官長を務めている。

もちろん以前ここ、ゴンドリンでエクセリオンと双璧だったことは知っているし
むしろ知らないエルフのほうがいないだろう。


だが、その姿はたちの知っているグロールフィンデルとは微妙に違う。

名前の由来でもある金の髪は見事なウエーブを描いているし、
その表情はまさに金の獅子ともいえるくらい気高い。


裂け谷にいるグロールフィンデルは髪はどちらかというとストレートだし、
表情も剣を握っている時以外はとても優しい向日葵のようだ。


そのギャップにたちは戸惑うばかり。


だが、そんなたちを気にも留めずに二人はエルラダンとエルロヒアに近づいた。


「私はエクセリオン。こっちはグロールフィンデル。よろしく」

そう言って二人はたちに握手をする。


エクセリオンがと握手をする際、小さく先ほどの謝罪をした。



「そして、だが…そうだな……。
 ああ、マイグリン。そなたにしよう」


トゥアゴンの呼びかけに黒髪の小柄なエルフが姿を現した。


“マイグリン”そういわれては背筋が凍るかと思った。



彼こそ、このゴンドリンを没落に陥れるきっかけを作った者。

モルゴスの拷問に恐れをなした彼はゴンドリンの場所と襲撃方法を教えてしまうのだ。

さらに、彼は従姉弟であるイドリルに秘めた想いがあった。


モルゴスがゴンドリンを落とした際にはイドリルを彼にやると約束したのだ。

愛しの相手を手に入れられるのなら、と彼はその魔の手を取ってしまうのだ。




マイグリンはゆっくりとたちの前に歩み寄る。

明らかに怯える

エルラダン、エルロヒアも警戒しているようだ。


だが、マイグリンの反応は意外にも普通で。

むしろ少し陰気な雰囲気がある。


「よろしく…」

そう小さく呟くとマイグリンは再び玉座のそばの天蓋の影に消えていった。


その様子にエクセリオンとグロールフィンデルは肩を竦めて苦笑いをする。



「では、そなたたち3人は侍女たちに部屋を案内させるから共に向かうように。
 ああ、は先に手当てをさせよう。
 エクセリオン、グロールフィンデル、マイグリンには話がある」


“以上、謁見を終了する”そう言うとトゥアゴンは玉座から立ち上がりその場をあとにする。

それと同時に天蓋が降ろされ回りのエルフたちは丁寧に主に礼をしていた。



「では、こちらへどうぞ」


数人の侍女たちがたちのそばへ近寄る。

「貴女は先に治療室へ。脚の手当てをしましょう」


エルラダン、エルロヒアは心配そうにを見つめたが、
侍女たちに“心配ありません”と言われ複雑そうにと分かれた。







一方、トゥアゴンに呼ばれたエクセリオン、グロールフィンデル、マイグリン。


彼らはトゥアゴンの執務室に集まっている。



「…トゥアゴン様、私は貴方様の決断に異を唱えるつもりはありません。
 ただ…あの話…私にはどうしても真実とは思えないのです」

エクセリオンの訴えにトゥアゴンは窓からゴンドリンの風景を見下ろしながら答えた。


「知っている。おそらく、いや間違いなく彼らが言ったのは嘘だろう」

話に矛盾点も多い。

第一、流浪のエルフだといった割りに髪も整えられて身奇麗にしている。

着ている服も素晴らしい素材から出来ているのはわかる。



「では、どうしてあのような決断を…」


今度はグロールフィンデルが言った。

「…なぜ・・・か。そうだな…一番の理由は…あのという娘だ。
 本当にイドリルの幼い頃に似ている」


ゴンドリンの姫の名前が出たとき、マイグリンが少しだけ反応する。



「我が娘に似ている娘をたとえ不審者といえどそう易々と処刑することは出来ない…」

トゥアゴンは自分自身に苦笑いをする。


「それに、彼らがこの国に不利益なものを持ち込んだとはどうしても思えないのだ。
 なぜか…彼らを守らなければならない気がする…」


彼は振り返り言葉を続けた。


「だが、そなたたちはそれでは納得しないだろう?
 だから、彼らを指導しながら見張って欲しい。
 もしおかしな真似をしたらその際は私の指示を仰ぐ前に…」




切ってかまわない…







3人はそれを聞くと了解の意として敬礼をし部屋を後にした。











一方傷の手当てを受けたは案内された部屋にいた。


裂け谷にある自室と比べると狭く、殺風景。

だが、命の安全が保障されただけマシだろう。



寝台にゆっくりと横になる。

ふと、窓の外を見ると白い鳥が飛んでいくのが見えた。


まさか、自分がこのゴンドリンにいるなんて驚きだ。

今まで沢山の本も読んだし、エレストールと歴史の授業をしたら確実にこの名は出てくる。



「あたしたち…どうなっちゃうんだろう……」


フェアノール家にいた時も襲い掛かったこの不安。

前はなぜか帰ることができた。

だからといって今回も帰られるとは限らない。


「お父様…お母様……エレストール…」

小さく呟くと目頭が熱くなり涙があふれそうになる。





その時、部屋の扉を数回のノックが聞こえる。


「どうぞ」

寝台から身を起こし乱れた髪を手櫛で整える。


「準備は出来ましたか?」

そこから顔を見せたのはマイグリン。


「え?準備?」

「そこに文官の長衣があるでしょう。
 早く着替えてください。仕事を教えます」


ふと目線を向けると丁寧に畳んである長衣が目に入る。

「あ、はいっ…」

急がないと、と即座には自分の襟元に手を掛ける。


驚いたマイグリンは少し呆然とすると一気に真っ赤になった。


「わ、私は外で待っていますっ!
 着替えたら言ってくださいっ!」

慌てたように扉を閉じて出て行ってしまった。


「……結構可愛い人?」

この呟きは誰にも聞かれることはなかった。



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2004/12/05


ヒロイン次は文官として働き始めます。

さて、事前に宣言しておきます。

毒苺はマイグリンが可愛くて可愛くて仕方ないですw
あの不幸っぷりは見ていて愛しいくらいです。

陰険、根暗な彼を思い切り弄ってみたいですw(セクハラ……
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