◆◇◆FIRST LOVE-Fifth Story-◆◇◆









原因は何だったのだろう


今更考えても仕様が無いことだけど考えてしまう





最近エレストールに薦められた物語の古書に熱中して睡眠時間が減ったから?


どうしても苦手な野菜をこっそり残していたから?


それとも昨日お兄様たちと水浴びしたせい?




………多分最後が一番有力ね。









は朦朧とする頭を抱えながら、太陽の光が差し込む部屋で
まだそれが真上にあるにも関わらず寝台に横になっていた。













その日の朝のこと。

最近夏が近づいているせいか気温も高く、日中になると暑いと感じる。


草木も青々と茂り、それらを揺らす風も熱を感じる。



は少し薄手の服を選ぶと、鏡の前で色合いを確かめて着込む。


スカートの丈が膝上5センチくらいで顧問長に注意されるかな、と
他愛も無いことを考えていた。


そんなときに侍女たちがの髪を編むために部屋に来た。

彼女たちも薄手の服になり、改めて夏が近づいているんだなと認識する。





「おはようございます、姫。」

「おはよう。今日も暑くなりそうね。」



鏡台の前の椅子に座り髪を梳いてもらう。

“今日はアップにしてね”とが注文すると侍女たちも嫌な顔一つせずそれに応じる。



「でも、姫。昨日みたいにエルラダン様とエルロヒア様と一緒になって水浴びしないでください。
 姫は女の子なんですよ。」

「分かってるわよ〜。同じことを昨日何度もお父様とエレストールに言われたわ。」



少し苦笑いする





そう、昨日は本当に暑く日中の気温は真夏日と変わらない。


そんな時、の双子の兄エルラダンとエルロヒアはグロールフィンデルとの剣の稽古の後
あまりの暑さに服を着たまま湖へ飛び込んで二人で水浴びをしていた。


それを見かけた

近寄って声を掛けると、二人はも一緒においでと濡れた手を差し出す。


その涼しげな様子に、正直この暑さに参っていたは少し心が揺れるが
後々父や顧問長に叱られるのは目に見えている。


その旨を双子に伝えるが、はその時彼らの目にいつもの悪戯を思いついたときの
あの喜びに似た笑みが浮かんでいることに気づかなかった。



二人は同じ歩調で全身びしょぬれの身体をに近づけ同時ににっこりと笑う。


背筋に嫌な予感が走る


だが、それももう遅い。




エルラダンとエルロヒアはの両腕をそれぞれ掴むとそのまま助走をつけて湖へダイブ。

3人がいきなり飛び込んだ湖は盛大に水しぶきを上げ
近くにいた小動物は水を被らぬように即座にその場を離れた。



その後は予想をするもの簡単。


初めはも怒りながら兄たちに抗議をしていたが、
いつの間にか一緒になって遊んでいた。



それから3人が服だけでなく、髪から雫が滴るくらい遊んだ後、
そのことがエレストールやエルロンド達に見つかり3人は仲良く説教を受けたのだ。









髪結いも終わり、朝食のために足早にダイニングへ向かう。

途中テラスを通ると少し強めの風が吹く。


髪をアップにしてもらったため露になった首筋に風が通りすがすがしい。

すると丁度テラスで散歩をしていたのであろう、顧問長と会った。


「あ、エレストールおはよう。」

「おはようございます、姫。」


“今日も暑くなりそうね”等他愛も無い会話をしていると、
何か気づいたようにエレストールが思案顔でに尋ねた。


「姫、少しお顔が赤いようですが…。」

「そう?」


自分の両手で頬を包んでみると確かに少し熱い。


「ちょっと…熱いかな?」


“ん〜”と唸りながら言うを見ていたエレストール。

「姫、少々失礼します。」



そう言うと彼は男性にしては少し華奢な掌をの額と首筋に当てた。

「え、エレストール!?」



いきなり体温が上昇し声が上ずる。

しかしエレストールはそんなことを気にも留めない。



「やっぱり、姫。熱がありますよ!!」


「…え?」



そう言われるのが早いか、がその熱を自覚するのが早いか。

急に目の前が真っ白になり、直後に真っ暗になった。


最後に見たのは反転した裂け谷の風景と驚きに満ちた顧問長の瞳。




「姫!!しっかりしてください!!」


いきなり崩れたその小さな身体を支え、少し揺らしてみるが
少し乱れた吐息を吐くばかりでエレストールの声に応える様子は無い。



「どうしたんだ?朝から大きな声を出して。」


そこに今朝は早番で谷の結界の外へ見回りへ行っていたグロールフィンデルが姿を現した。


「グロールフィンデル!!すぐに卿を呼んできてください!!
 姫が倒れたと!!」


「何!?」


彼も驚き顧問長の腕の中にいるを見るが、すぐに館内へ走り
主の部屋へ一直線に向かった。


エレストールもそれを確かめると慎重にを抱き上げ足早に館内へ戻る。













エルロンドは娘の容態のことを聞くとすぐに診察室へ向かった。


外にはエレストールとグロールフィンデル。

また、騒ぎを聞きつけた双子や侍女たちも心配そうな表情で閉ざされた診察室の扉を見つめていた。



エルロンドがを診始めてからすでに5分。

その扉は意外と早く開かれた。


そこから出てきたエルロンドは目を伏せて難しそうな表情。


「卿!!姫の容態はどうなんですか!?」

「何か重い病気ですか!?」


病気を殆どしないエルフが急に倒れたのだ。

皆、きっと重病に違いないと思っているようで。




するとエルロンドはその重い口を開いた。



「……風邪だ…。」



「…は?」




思わず沈黙が訪れる。

「…だから風邪なのだ。2,3日も安静にしていたらすぐ治るであろう。」



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2004/05/30


はい、今度は1度はやっておきたい病気話(ぇ
そういえば、毒苺は1年以上このサイトをやっていますが病気話を書いたことが無いようです。

で、初めて書いたのがあの病気をしないエルフで、なのだから
もう頭の悪さ特盛ですね…。


本当は今回シルマリル絡みにしようと思ったんですが、どうしてもまとまらなくて…。
おそらくフェアノール一家関係なんだろうけど…
きっと需要が低いだろうな…
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