食事も無事終了。


最後の一口までエレストールに食べさせてもらったは上機嫌。

一方エレストールはどうしても照れがのこったようだ。


「さて、あとは薬を飲んで休んでいただかないと…」


しかし、肝心の薬はまだの元にない。

エルロンドが調合に手間取っているのか、エレストールは未だに現れない主を
少しの苛立ちを覚えながら待っていた。




さて、なぜエルロンドが未だに現れないかというと…






「父上〜…早く胃薬ください〜…」

「じゃないと僕ら食中毒でマンドスの館に行くことになります…」

「…残念ですが、食中毒ではマンドスでも受け入れてもらえませんよ…」


エルロンドが薬剤室での風邪薬を調合していると
死に掛けながら現れた双子の息子と武官長。

何事かと理由を尋ねると、自分たちが作ったおかゆを食べたらお腹を壊したとのこと。


もう呆れる以外の何物でもない。


エルロンドの眉間の皺が更に増える。



「しかもそなた達はそんなものをに食べさせようとしていたのか…」


「絶対美味しいと思ったんですよ〜…」

「そうそう、僕らはグロールフィンデルが言ったとおりに作っただけなのに…」


そのセリフにエルロンドはグロールフィンデルを睨みつける。


しかしそれは濡れ衣である。

必死に首を左右にふり身の潔白を訴える金華公。


何がともあれ、エルロンドはの風邪薬と共に
この3馬鹿のために胃薬まで調合することになったため遅くなったのだ。






さて、さすが医学の大家というべきか、さっさと3人分の胃薬を調合するエルロンド。

完成品を彼らに差し出す。


差し出されたのは小さな瓶に入った少量の液体。

だが、その液体は妙に禍々しい緑色。

なぜだか分からないが中途半端に光を放っているため更に恐ろしい。



「…卿…これは本当に薬なのですか……」

その小瓶を片手に頬を引き攣らせながら尋ねるグロールフィンデル。


そしてそれを尋ねられたエルロンドもルシアンの再来とまで謳われる娘の父として
美しい笑顔で答えた。



「当たり前だ。私を誰だと思っている。」


それはもちろん中つ国一のお医者様だ。

彼が調合した薬ほど利くものはないだろう。



だが、良薬口に苦しとはいうもののこの液体はその域を超えていた。



「…コレ飲んでさらに本当に治ると思う?」

「余計に悪くなりそうだよね…。」


そう結論付けた双子が次に取る行動は安易に予想がついた。



「さ、グロールフィンデル。君が先に飲んでよ。」



エルロンドに勝るとも劣らない笑顔の双子。

だが、いくら主の子息の命令とはいえ彼だって命が惜しい。

薬を飲むのに命が惜しいというのはなかなかの誤植だが、
つい先ほどアレだけのおぞましいおかゆをたべたのだ。

誤植ともいえない。


「な、何故です…。ここは公平に3人同時に…」

「いやいや、ここは年長者を優先しないと。」

「こんなときばかり年寄り扱いしないでください。」

「そんな!ただ、僕らはりっぱな英雄に早く良くなってもらいたくて。」


譲り合いではなく、誰が先にこの薬の実験台になるかというやり取り。


そんな3人を見かねてエルロンドが一言。




「3人同時に飲まんか!!この馬鹿共!!」





その後、確かにお腹は治ったが別の苦しみを3馬鹿は体験することになった。














さて、ところ変わって再びの部屋。


食事も終わりは再び寝台で寝息を立てている。

そこへやってきたエルロンド。



「すまない、遅れた。」

「遅いですよ、卿。一体何があったんです?」


ずっとに付き添っていたエレストールはやっと来た主に少なからず非難の声を上げる。

「エルラダンとエルロヒアとグロールフィンデルが胃薬を調合してくれと言っていてな。」


それを聞きエレストールは不思議そうに首をかしげた。

彼はどうやら3人にあのミルクおかゆを無理やり食べさせたことはすっかり忘れているだ。


「さぁ、に薬を飲ませる前にもう一度診察する。
 エレストールは部屋から出ているように。」



小さく頷くと軽く会釈をしての部屋から外に出る。











さて、再び戻って薬剤室。

そこではエルロンドの壮絶な胃薬を飲んだ3人は椅子に項垂れるように座り込んでいる。

だが、さすがエルロンド。

あの壮絶な薬で見事3人の胃痛は見事治まった。




「あ〜…本当に死ぬかと思った…。」

「今日は本当に災難だよ。」


双子が呟いているのを横目で見ているグロールフィンデル。

今日一番の災難に遭っているのは彼なのだから。


「それにしても父上の薬、あれヤバ過ぎだよ。」

「あれ、薬っていう限度超えてるよね。」

「…でも、も風邪薬飲むんだろ…?」

「…………」




「「が危ない!!!!」」





そう叫ぶのが早いか、部屋を飛び出すのが早いか、
息のピッタリ合った双子は大急ぎでの部屋へと向かった。

もちろん、死に掛けていたグロールフィンデルを引き連れて。










さて、の診察のため部屋を追い出されたエレストール。

彼はよく晴れ渡った初夏の風景を窓から眺めていた。



しかし彼の心は天気のように晴れ渡ってはいない。


やはり、が心配なのだ。



ずっと生まれたばかりのころから世話をしてきた彼にとって、
は主の娘、というだけの存在ではない。



ふと目をやるといつもの肩に留まっている小鳥も
心配そうにの部屋のドアを見つめている。


エレストールも彼らに苦笑いをする。


と、そのとき、静かなこの空間を打ち破るような騒音。



「「〜〜〜〜!!!!」」


それは双子のエルラダンとエルロヒア。


そして、彼らに引きずられるように付いて来たグロールフィンデル。



「な、何事ですか!?」

「あ、エレストール!!は!?」


「現在卿が診察してます。」

驚きを隠せないままの部屋を指差すと、双子はすぐにドアを開ける






が!!






「診察中だ!!入るな!!」


エルロンドにより先ほどのトレイがドアを開けた双子の顔に直撃。

彼らは大人しく引き下がることになる。



「何をしているんですか!?全く貴方たちは…」


エレストールがいつものお説教モードに突入しようとする前に双子は声をそろえて訴えた。



に父上の薬を飲ませてはいけない!!」

「は?」

「父上の薬…確かによく効くんだけど…」

「効く前に、だったらマンドスの館でトゥアゴン様に会っちゃうよ。」




“自分はすでに会いました”と言う武官長。


そんな同僚を無視し更に理由を問うエレストール。


と、そのときやっと中から診察が終わったというエルロンドの声が聞こえた。



勢いよく中に入る双子。


は朦朧とする様子だが双子に笑顔であいさつした。


!!大丈夫かい!?」


寝台の傍らにしゃがみこみ妹の手を握り締める。



「ええ、たった今お父様が調合してくださった薬を飲みましたから大丈夫です。」

“薬”と聞き顔面蒼白になる双子。



…薬飲んだのかい…?」

「だ、大丈夫なのか…?」


そんな二人に不思議そうに答える



「え、ええ。ちゃんと診察もしていただいたし、
 それにお薬だって甘いシロップみたいでしたから飲みやすかったです。」


満足そうなとは正反対に固まる双子。


「…え?」

「甘いシロップみたい…?」




双子とグロールフィンデルが飲んだ薬とは正反対。


「…なぜ……」



3人のうち誰が呟いたかは分からないが、その回答にはエレストールが簡潔に
かつ的確に答えた。





「薬を飲むのが貴方たちだからですよ。」



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まぁ、ちょっとしたお遊び話です。

イマイチ夢っぽくないですがいつものことです(ぇ


さて、この話を書いたら毒苺自身風邪をひいてしまいしました。
さらに、これを書いているときにはレンタルしてきたERを観てたし…


どことな〜く全てに共通点が…
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