裂け谷の館の主人エルロンドの娘、





齢300歳


エルフにとってはまだまだ子供ですが…





初めて恋に落ちました。





◆◇◆FIRST LOVE-First Story-◆◇◆









第三紀1801年



美しい裂け谷の景色の中に不似合いな泣き声が木霊する。




「わぁぁぁんっ!!あぁぁぁんっ!!!」



その声を聞きつけてか裂け谷の主エルロンドと
谷の双璧、グロールフィンデルとエレストールが急ぎ足で駆け出してきた。


そして彼らはその声の原因を見て思わず呆気にとられる。



裂け谷にある木の中で1,2を争う高さの木の頂に近い枝で
母譲りの銀髪を揺らしながら小さい幼女…いや、少女は声をあげて泣いていた。



「……何をしているのだ……?」



正直、理由を問いたださなくてもある程度予想のつくことだがあえて尋ねるエルロンド。



そして、その理由は予想通りのものだった。






「ラダンお兄様とロヒアお兄様がをここまで連れてきて
 そのままどこかへ行ってしまったんです〜〜っ!!!」


涙声の答えに3人は同時にため息をついた。


つまり、判りやすくいうと、
エルロンドの息子にしての兄にあたる双子の王子、エルラダンとエルロヒア。

この二人は何かに付けてをからかって泣かせていた。


もちろんが嫌いなわけでも、苛めたい訳でもない。



ただ単に彼らにとって可愛い妹との楽しい遊び。

だがにとっては苛められているのと変わらなかった。



そして今日はきっと

『『綺麗な景色を見せてあげる』』
と見事にハモり、有無を言わさずをその高い木の枝まで連れて行き
そのまま置き去りにしたのだろう。








「グロールフィンデル。姫を降ろして差し上げなさい。」


ため息混じりにエレストールが言うと、
グロールフィンデルはエルフらしい軽やかな足取りで木を上ると
すぐにのいる枝までたどり着いた。


「さぁ、姫。今地上に降ろして差し上げますよ。」

柔らかく微笑んで手を差し伸べると、はその手に飛びついてグロールフィンデルに抱きついた。



しゃくり上げながらもしっかりとグロールフィンデルの首に手を廻すの背中を
ポンポンと優しく叩いてやる。

そしてが落ち着いたのを見計らって再び軽い足取りで木を降り始めた。



瞬く間に地に足を着くとはエルロンドに駆け寄り今度は彼に抱きついてまた涙を溢れさせる。


「怖かったです〜〜……」


エルロンドもを安心させるために軽々と抱き上げるとその小さくて丸い額に口付ける。




ちょうどその時、この小さな災難を引き起こした張本人たちが現れた。


!ごめんよ。木に置き去りにして。」

「ちょっと用事を済ませていたらすっかり忘れていたよ。」

「でもグロールフィンデルが降ろしてくれたみたいだしよかったよかった。」

「本当本当。」


『『あははははは』』と見事なハモりが谷中に響き渡る。






「『あははははは』じゃありません!!!!」


今度はエレストールの良く通る怒鳴り声が谷中に響き渡る。




その声に双子の王子達のみならず、エルロンドやグロールフィンデルまで肩を震わせた。


「貴方達はどうしてそう毎日毎日姫を泣かせるのですか!!?」


「いや〜…泣かせてるつもりは無いんだけど…。」


「現に泣いているではないですか!!」




エレストールの指差す先にはエルロンドに抱き上げられて未だに泣いている



エルロヒアとエルラダンは同時にお互いのそっくりな顔を見合わせると
愛しい妹君の元へ歩み寄る。



〜。もう泣かないでくれよ。」

「僕らが悪かったよ。」

「だからほら。のために持ってきたんだ。」


ようやくしゃくり上げるのをやめてそっくりな2人の兄を見ると
彼らは笑顔で可愛らしいピンク色の花を手渡した。



「「ごめんね。」」



2人は笑顔でそう言うと同時にの両頬に唇を落とす。






さっきまでの涙はどこへいったやらその花のように嬉しそうに微笑んだ。




「ありがとうございます。ロヒアお兄様、ラダンお兄様。」








「「じゃ、僕たち用事があるから〜」」


2人はそそくさと立ち去る。




それと同時にの悲鳴が再び谷中に響き渡る。



「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」


「ど、どうした!?」


「け、け……」


「「「け?」」」



エルロンドを始めとする3人は不思議そうに尋ねる。






「毛虫〜〜〜〜〜!!!!!!」




そう、あの2人がに手渡した花には小さな毛虫が
『Hello♪』とでも言いたげに体をうにょうにょさせていた。

そして、その叫び声と同時に遠くで双子たちの足音が駆け足になるのを聞き取った。





「王子達!!!戻って来なさい!!!!」


再び顧問長の叫び声が響き渡る。



谷に住むエルフ達にとっては泣き声も叫び声も怒鳴り声も
すでにこの一家+αの日課のように感じていた。



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2004/03/04


はい、世にも珍しいエレストール夢の始まり始まり〜♪
でも、まだまだ夢じゃないですね…。

どちらかというと裂け谷一家のほのぼのストーリーに近いです。


とりあえず、今現在原作を二つの塔の半分しか読んでいない(ぇ)毒苺ですが、
お付き合いいただけると嬉しいです。


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