「「グロールフィンデル!!」」



すでに夕日も落ち、空に無数の宝石が輝く時間帯。


これから夜の見回りに行こうとしていたグロールフィンデルを引き止める双子王子。

父譲りのストレートの黒髪を揺らしながら駆け寄ってくる。


「「見なかった?」」


さすが双子と言わんばかりに同じ声で同じと言葉を同じように発する。



「姫ですか?午前に見たきりですが…。」

午前、エレストールに啖呵を切って書庫を飛び出したあと、やはり気になってを探した
グロールフィンデルだが結局見つけられず仕方なく公務に戻っていた。




「ええ〜!!僕らも朝食のときに見たきりなんだよ。」

「昼食には来なかったし。部屋にいるのかなってさっき覗いたらいないんだよ。」




妹の不在を不安げに話す兄たち。

もちろんグロールフィンデルも不安になる。




「と、とりあえず侍女たちにも手伝ってもらって館内とその周辺をすべて探しましょう。
 もしかしたらどこかで居眠りをしているのかもしれません。」



以前にも急にが姿を消したと思ったら、
厩でアスファロスに寄りかかり眠っていたのだ。



同じタイミングで大きく頷くエルラダンとエルロヒア。

だが、彼らはなにやら嫌な予感がするようで険しい表情だった。



そしてその嫌な予感はグロールフィンデルも同じだった。











すれ違う侍女達や宮廷顧問達に逢う度にのことを伝えると皆形相を変え必死に探し始める。


書庫
の自室
中庭
渡り廊下


終いにはが本当に行った事があるのかあやしいが武器庫まで探しに行った。




だが、銀髪の麗しい姫君の姿はどこにも無い。






「こっちにはいなかったよ!!」


「こっちもだ!!」


どうやら誰もを見つけられなかったらしい。

ふだん飄飄) ひょうひょう ( としている双子だが
自分達の大切な妹の行方が判らないと知り黙っていられない。



「父上にたのんでどこにいるか探してもらおう!!」

「もしかしたら館の外にいるかも知れない…。」

「まさか結界の外にいるなんてことは…。」




恐ろしい予想を口に出して背筋が凍る。










エルラダン、エルロヒア、グロールフィンデルは駆け足で
普段用が無い限り誰であろうと立ち入り禁止の執務室へ向かう。




声を掛けるどころかノックすらしない、まるでドアをブチ破る勢いで執務室のドアを開け放つ。





「何ですか!!貴方達は!!ノックくらいしなさい!!」


案の定室内にいたエレストールに非難の声を掛けられる。

エルロンドも驚いた表情を隠せない。




「エレストール、説教ならあとでいくらでも聞こう。時間がないのだ!!」


「…何かあったのか?」




グロールフィンデルと双子の表情からエルロンドは只事ではないことを察知する。







「「がどこにもいないんです!!」」




王子達の報告にエルロンドは思わず立ち上がり、
普段あまり表情を変えないエレストールすら数枚の書類を床に落として動揺を見せていた。




「どういうことだ!!?」




「私は姫を午前に見たきり一度も見ていなくて…。」


「僕らは昼食にも来ないが心配で今侍女達も含めて館中のエルフ皆で探していたんですが…。」


「どこにもいないんです!!が行きそうなところはすべて探したんですが…どこにも…。」





3人の報告にエルロンドは見る見る青ざめる。


だが、動揺ばかりしている場合ではない。





静かに目を瞑り、結界内を彼自身の力でくまなく探す。






数分後、彼はゆっくりと瞳を開けると小さく震えながら搾り出すように声を発した。





「…は……この結界内にいない…」






エルロンドの言葉にそこにいた全員が言葉を失う。


だが、そこで一番のショックを受けていたのは冷静沈着のエレストールだった。




「ま、まさか!!卿!!もっとちゃんと…ちゃんと探してください!!もしかした見落としているかも…!!」






普段のエレストールからは想像が出来ない態度に全員が驚く。


唇を噛み締めて抗議してくる部下に驚くものの、
ゆっくりと瞳を閉じると悔しそうに首を左右に振った。





エルロンドの反応にエレストールは体から力が抜けていく感覚に襲われた。

そのまま床に倒れそうになるところを自分より背の高い金華公に支えられる。





「ど、どうしよう…わ、私のせいだ!!私が姫に…あんなことを言ったから……」






支えられながら、普段からは想像も出来ないくらい弱弱しい声と言葉で自分を攻めたてる。



「エレストール!!今そんなことを言っていても仕方ないだろ!!」


肩を掴んで力任せに揺さぶる。




「卿、今から武官たち総出で結界の外を探索してきます。」

グロールフィンデルは急にバルログバスターの名に相応しい厳しい武人の表情になる。




「「僕達も行く!!」」



エルラダンとエルロヒアも自分達の愛剣を手に持ち直す。







「判った、グロールフィンデル達は結界の外の探索をたのむぞ。
 夜だからいつオーク達が現れるとも判らない。武器はしっかり持っていくように。
 エレストールは谷中のエルフ達に声を掛けもう一度結界内の探索を…」


「いいえ!!私も結界の外へ向かいます!!」




普段エルロンドの命令に逆らわないエレストールが、彼の言葉を遮ってまで抗議する。



「エレストール!!何を一体…」


「今回姫が姿を眩ませた一番の理由は私にあります!!
 お願いです!!探索に向かわせてください…!!」




懇願するエレストール。

普段仕事中でもこんなに熱い彼を見たことは無い。



「卿、エレストールも外の探索へ向かわせましょう。」




エルロンドが悩んでいる横から声を発したのは金色の同僚。


「多分姫は結界の外にいる可能性が高いでしょう。
 だったら外に探索に行く人では一人でも多いほうがいいです。」




まさか自分に助け舟を出してくれるなんて、エレストール自身も驚きだった。




そしてエルロンドは少し考えると厳しい表情でいった。




「では、エレストールも外への探索へ向かうように。」



エルロンドの許可を確認すると主に礼をし、一目散に執務室から飛び出した。


取り残されたグロールフィンデルや双子は驚いて顔を見合わせたが、
すぐにエルロンドに礼をし執務室を後にした。




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2004/03/08



あれ?ヒロインいませんね…。
そして動揺しまくる顧問長さんw
そんな彼を支える金華公w

…グロエレ?(爆)
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