「あ〜今日のお茶の時間は楽しかった。」



夜、髪に櫛を通しながら就寝の準備をするが思い浮かべるのは
日中のお茶のこと。


侍女たちによって作られた木苺のタルト。



甘酸っぱくてそれがエレストールの淹れた香り豊かな紅茶に良く合う。


「エレストールとたくさんお話できてよかったし。」





ウキウキとその出来事を忘れないうちに日記帳に書き記す。


「よっし!明日も良い事がありますように。」



星に向かって祈りを捧げると、綺麗にベッドメイキングされたベッドに
身を沈めて夢の小道へと旅立った。























朝、鳥の囀りが聞こえる。


朝日が窓から差し込んでキラキラ輝く。



「朝よ、。起きなさい。」


いつもの通りを起こす声。


「ん〜…あと少し…」



まだ眠いため布団を引っ張り上げ寝返りをうつ。


「だめよ。じゃないと、エレストールに起こられるわよ。」



そのセリフを聞いてふと、とまる。



「お、起きる!!起きます!!」



ガバァっと勢い良く起き上がる。


そこには笑顔の侍女たち…ではなく、美しいエルフの中でもさらなる美貌を持つ女性。




「あ、アルウェンお姉さま…?」


「おはよう、私の小さな。」



にっこりと優雅に微笑むその黒髪の女性は間違いなく夕星姫、
そしての憧れの姉、アルウェンだった。




「ど、どうしてですか!?裂け谷にいらっしゃるなんて聞いてな…」

「ええ、驚かせようと思って黙っていたのよ。
 先ほど父上にもお会いしてきたわ。もちろんと同じく驚いていたわ。」



くすくすと楽しそうなアルウェン。

そんな彼女と対照的に未だに驚き呆然としている





「さ、小さなお姫様。30年ぶりの再会に抱擁もキスも無いのかしら?」



両手を差し出して首を傾げる。


もようやく頭を整理できたのか、再開の喜びの感情があふれ出し
その腕に飛び込む。


「お久しぶりです!!アルウェンお姉さま!!」

その象牙のような滑らかな頬にキスをすると、アルウェンもお返しとでもいうように
の頬にキスを返す。



「でもどうして急に裂け谷へ?」


「それはもちろん決まってるじゃない。
 可愛い妹の恋模様を見に来たのよ。」


アルウェンのセリフには頬が赤くなる。



「さ、これから私の歓迎の宴を朝から開いてくれるそうよ。
 今朝は私が髪を編んであげるから、ゆっくり今までの話を聞かせてね。」


そう言うとのためにロリアンから持ってきたのだろう、
キラキラ輝くドレスを見せる。


「さ、これを着て綺麗になってエレストールを驚かせましょう。」


「…ありがとうございます!!」



大好きな姉との再会と、その気遣いに目じりに小さな雫が溢れた。



















一方、テラスではアルウェンの急な裂け谷訪問の宴の準備のため
慌しく沢山のエルフたちが行き交っていた。


朝に弱いグロールフィンデルも強制的にエレストールに蹴り起こされた。




「ああ、もう!そんなデカイ図体でボ〜っと突っ立っていないでください!!
 暇なら厨房から料理を運んできてください!!」


忙しそうに周りに指示を出しながら走り回っているエレストール。

そんな彼にグロールフィンデルは未だに眠いのか半目で呟く。



「私は先ほど夢でアルウェン姫を見た気がするのだが…気のせいだろう…。」


どうやらアルウェンを見たのを勝手に夢と解釈していたらしい。

顧問長はこの腑抜けまくっている同僚に大きくため息をつくと
丁度水差しを手にしていたエルフからそれを受け取る。



「グロールフィンデル。」

“ん〜?”と伸びきった声で返事をする彼にその水を頭からかぶせる。




「あなたがそれを夢だというのなら私たちはなぜこうも忙しく走り回っているのですか!?
 いい加減その寝起きの悪さ直しなさい!!」



そういうと空になった水差しをずぶ濡れのグロールフィンデルに押し付け
また会場設営の指示を出すために踵を返した。


見事な金髪が濡れて雫を落としている様子を見て、金華公は
“エレストールに水を掛けられた夢を見た気がする…”と呟いたとかどうとか…。











エレストールのその的確な指示と、他のエルフたちの俊敏な動きによって
朝からの宴はどうにか間に合った。


谷中のエルフたちがあつまり、数十年ぶりのアルウェンの訪問に喜びを謳った。



以前谷に訪れたときよりさらに磨かれた夕星姫の美しさに息を呑むものも多数。





「本当…お姉さま綺麗…。」


遠目でアルウェンを眺めるはほぅ、と感嘆のため息をつく。


「それはそうですが…今朝の姫はアルウェン姫に劣らないくらい美しいですよ。」

仕事が一段落ついたエレストールがの横に立つ。




「え?」


「そのドレスと少しだけ引いた紅、アルウェン姫にしていただいたのでしょう?
 美しいですよ。」


優雅に微笑むエレストールにはまた頬を染める。


「おや?姫。今日はどうしたのですか?とても美しいですね。」




後ろから現れたグロールフィンデル。

どうやらようやく目が覚めたらしい。



「…人のことをとやかく言う前にグロールフィンデル。
 あなた自分の姿を見たほうがいいと思うわよ。」


呆れ気味に言う

それもそのはず、グロールフィンデルの姿は未だに濡れたまま。

太陽のように輝く金髪から零れ落ちる雫は輝いて美しいが、この場には不釣合いだろう。




「不思議ですよね。気が付いたらこんな姿に…。
 エレストールに水を掛けられた夢を見た気がしたんですが…。」

顎に手を当ててむ〜っと悩む武官長に顧問長は頭痛を覚えていた。



そんな二人に挟まれてくすくす笑う





その柔らかい空間に包まれたを遠くから見ていたアルウェンは
嬉しそうに微笑んでいた。




「「やぁ、僕らの夕星姫。相変わらず美しいね。」」


「あら、お兄様方。こんな時間まで寝ていたのですか?」



アルウェンの意地悪な質問に“昨日までオーク狩りに行ってたんだよ”と苦笑気味に答える。


「ところで、はいつもあんな様子なのですか?」




目線の先には楽しそうに裂け谷の双璧に挟まれて談笑している3人の妹君。


「うん。そうだね。」

「いっつもあんな感じ。」


“おかげで僕らと遊ぶ時間が減ったんだよ”とボヤくのをあえてスルー。




「お二人はご存知なんですよね?のこと。」


「うん…。」

「まぁ、ね…。」



複雑そうな表情の双子。

「どうしたんですか?」


「うん、そりゃあ僕らだってが誰かを好きになってくれるのは嬉しいし、祝福したいよ。」

「でも、やっぱり寂しいよね。最近いっつもエレストールのことばっかりだし。」



「それに…さ。相手が…ね。」

「まさかエレストールとは…。グロールフィンデルだったらまだ納得できるけど。」




悪戯好きな双子。

だが、この2人はこのネタで未だになんの悪戯もしていない。



もし、相手がグロールフィンデルなら間違いなくからかいのネタにしていただろう。

しかし、相手は裂け谷の影の支配者、彼がいないと裂け谷は崩壊するといっても過言ではない
顧問長、エレストール。



下手に弄るわけにはいかない。





はエレストールが好き…ねぇ。」


アルウェンは改めて呟くと、その噂の人物とエレストールを眺める。


はエレストールに勧められるように朝食のフルーツを食べている。


食べにくい果実にいたってはエレストールが食べやすいようにして差し出す。



そんな2人の光景にアルウェンは少し考え込む。


「エレストールはの気持ち知らないんですよね?」

「もちろん。」

「エレストールはそういうことは本当に鈍感だからね。」




「…そうですか。」







ついでにもう一つ重要なことろ尋ねる。



「もちろんですが、このこと父上はご存じないんですよね?」


「あたりまえだろ。」

「もし父上が知ったら卒倒するね。」

「運悪かったらマンドスの館行きかも。」




これが大げさな訳ではないから性質が悪い。






「まぁ…これでが成長できるのなら…。」


小さく呟いたアルウェンの一言。

周りでは歌を唄い踊っているエルフたちがいるなかでの呟きでは
聴覚が優れている彼らといえど誰の耳にも届くことは無かった。




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2004/04/25


なんだかずるずると書いてます。

今回本当にオチを考えていないのでこの先どうなるか毒苺にも分かりません。


とりあえず、あまりヒロインの出番無いかも…。
周りの動向を、というかんじで。


ちなみに毒苺アルウェン大好きですw
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