200年前の裂け谷にて。 響き渡るのは大きな泣き声。 その声の元を確認するなりグロールフィンデルはため息をつく。 それは自分の主、エルロンドの娘。 彼女は寝起きのボサボサ髪で泣き喚いている。 その様子に彼女の世話役の侍女たちは困った様子。 「姫…いかがななったんですか?」 赤子より少し成長した程度のと裂け谷一の長身のグロールフィンデル。 彼がしゃがんだことろでと目線が合うわけではない。 それでもぎりぎり可能なところまで屈んでの様子を伺う。 はその大きな瞳から大粒の涙を流している。 頬は涙で濡れていて。 とりあえず、侍女たちからタオルを受け取り優しく拭ってやる。 するとようやくも大人しくなり小さく嗚咽をするくらい。 「何があったんだい?」 が大人しくなったのを確認して侍女たちに事情を尋ねる。 すると彼女たちは少し困った表情。 「…実は…姫の髪を編もうとしたんですが…。 それを嫌がって…。…その…グロールフィンデル様じゃないと嫌だと…。」 それを聞いてグロールフィンデルは絶句する。 彼は剣さばきは素晴らしい。 きっとこの裂け谷でも彼の右にでる者はいないだろう。 だが、この武官長。 戦闘以外のことはどこか抜けている。 それの証明の一つが彼の髪である。 裂け谷では珍しい見事な金髪。 すこし癖のあるその美しい髪は、残念ながら無造作に後ろで束ねられているだけ。 全てにおいて几帳面な顧問長によく小言を言われる対象でもある。 しかし、それは仕方の無いこと。 グロールフィンデルはハッキリ言うと不器用なのだ。 ただ編むだけでも彼の手に掛かれば金の毛虫と化す。 あんな綺麗な金髪を、なんともったいない。 宝の持ち腐れである。 そのためロリアンとの合同会議等正装をしなければならないときは、 エレストールによりかなりきつく編まれる。 自分の髪だってそんな扱いの彼が、他人の、ましてや自分の主の娘の髪を編めなんて到底無理な話。 「……姫…エレストールに頼んでください…。」 「いや〜!!グロールが編むの〜!!!」 再びごね出す。 200年後のなら喜んでエレストールに頼んだだろうに。 それから格闘すること2時間。 折れたのはグロールフィンデル。 ため息をつきながら侍女たちから櫛を受け取る。 に痛い思いをさせないように慎重にその銀糸を手に取る。 しかし、編むという単調な作業。 頭では理解していてもそれを手で表すとなると意外に難しい。 グロールフィンデルは途中で指が足りない、という現象に何度もぶち当たる。 試行錯誤すること1時間。 どうにかできたのはよれよれの編みこみ。 ところどころから髪の毛がぴょんぴょんはみ出ていて、あまりに不恰好だろう。 グロールフィンデル自身もその自分のあまりの不器用さに涙が出てくる。 だが、当のは。 「ありがとう!!グロール!!」 そう言ってちゅ〜っとグロールフィンデルの口にキスをする。 「ちょ〜っとまって!!」 一時200年後の裂け谷に戻る。 「つまり、今の話をまとめると、あたしのファーストキスの相手はグロールフィンデル…?」 脱力気味に尋ねるにグロールフィンデルは苦笑する。 「おそらく…。」 ちなみにエルロンドは昇天しています。 「あら、やるわね〜。ってば。」 この上ないくらい楽しそうなアルウェン。 双子に至っては 「「グロールフィンデルってロリコン…?」」 と、言われるしまつ。 ちなみに、裂け谷の風紀委員長、もとい顧問長のエレストールからは 「…貴方の女性関係に口出しする気持ちも権利も持ち合わせていませんが、 あまりに節操がないというのはどうかと思います。 だいたい、自分の主の娘に手を出すなんて、エルフのくせにどれだけ餓えているんですか。」 と、言われてしまった。 どこまでも威厳のない武官長。 だが、一番のショックはだろう。 「信じらんない…冗談でしょ…なんでぇ〜…」 200年前の自分の行動とはいえ衝撃的な事実なのは変わりない。 ただ、そこまでショックを受けるのはグロールフィンデルに対しても グロールフィンデルに想いを寄せる乙女たちにも失礼だろう。 「だいたい、なんであたしはそんなにグロールフィンデルに懐いてたの…?」 自分自身のことを他人に聞くというのはおかしい話だが、物心が付く前の出来事。 まったく記憶に無いのだから仕方が無い。 「…色々原因はありますが……。」 心に色々傷を負いながらもグロールフィンデルはまた200年前を思い出し始める。 ←戻る 4→ 2004/04/29 …これ、エレストール夢じゃない…。 グロールフィンデル出張りすぎ…。 いや、ヘタレな彼が好きなんですよ。 ちなみにまだまだ続きます…。 オチ本当にどうしよう…(汗 |
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