双子の兄達から貰った髪留めを嬉しそうに眺めていると、彼らがほぼ同時に口を開く。



「「、早速つけて見せてよ!!」」


買ってきた彼らにとっては可愛い妹にそれを着けて欲しいと思うのは自然なこと。





「えっ!?で…でも…。」


だが、は一向にそれを着けようとはしない。

それには理由があった。



せっかくエレストールから彼の髪留めを貰い、さらにそれを彼自らの髪に着けてくれたのだ。


出来る事ならそのまま外したくは無い。





「あ、明日着けますから…。」




そんなの申し出だが、事情の知らない二人は納得するはずが無い。




「何で?今すぐ着けてよ。」


「自分で着けられないなら僕らが着けてあげるから。」




そう言うと彼らはの後ろに回り込む。



「あれ?今日はアルウェンから貰った髪留めじゃないの?」


「シンプルっていうより…地味だよ。」




シュル、という音と同時に髪に開放感を感じる。


「だ、だめっ!!」


には絶対こっちの方が似合うよ。」


エルロヒアは楽しそうに髪を編み始める。




「そうそう、こんな地味なのより断然良いって。」


エルラダンはがエレストールから貰った髪留めを目の前の池に放り投げた。



「ああっ!!」





は反射的に手を伸ばすもののそれも空しくポチャンと池の中に沈んでいった。




呆然とする



だが、エルラダンとエルロヒアは気づかず二人での髪を編んでいく。



しばらく成すがままになっていたが、やっと我に返り同時に怒りと悲しみが込み上げる。



兄達に髪を編まれているにも関わらず勢い良く二人の方へ振り向く。





二人とも鏡のように同じ顔で不思議そうな表情をしている。



が、次の瞬間二つの乾いた音が当たりに響き渡る。


そして二人の頬に強い衝撃が走った。



「二人とも酷いです!!」


兄達を撃った手を押さえては涙を浮かべている。


彼らは普段のとのギャップに驚き目を見開いている。








そんな兄達を尻目に、は勢い良く立ち上がると方向転換をし一直線に池に向かって走り出した。



そして服のまま池に飛び込む。






「「!!」」


妹に打たれて呆然としていた二人も、の飛び込む水音で我に返り池に駆け寄った。



「何をしているんだ!!」


「早く戻れ!!」



そんな二人の忠告も聞かず、は投げられた髪留めが落ちたポイントまで進んでいく。







池の水深はそれほど深くはない。


だが、まだ子供のにはちょうど胸の辺りにまで水が達している。





水のせいで上手く前に進めないものの、どうにかして大切な髪留めを目に留めることが出来た。



見つけるや否や大きく息を吸い込むとぽちゃん、という音を響かせ水の中に身を投じる。







「「!!!!」」




双子の悲痛な声も水中のには聞こえない。


エルラダンとエルロヒアは無意識のうちに同時に池に入ろうとしたとき、
別の人物の手によって遮られた。




「「グロールフィンデル!!」」



それは裂け谷の武官長であるグロールフィンデルだった。

警備の見回りの最中に二人の声を聞きつけここに向かってきたのだろう。




「お二人は待っていて下さい!私が姫を連れてきます!」


そういうとグロールフィンデルは池の中に身を沈める。


沈めると言ってもエルフの中でも長身の彼にとっては足を入れただけ。

大体太ももの半分くらいの位置にしか水面がこない。





より遥かに楽に池を移動すると、水の中にいるを容赦なく引き上げる。


「ぷはぁっ!な、何!?」

「何とはこちらの台詞です!!何をしているのですか!!姫!!」



グロールフィンデルと同じ目線まで抱き上げられ、の身体からは水滴がぽとぽとと落ちる。


水面にすら足がつかないことと、グロールフィンデルの珍しく怒っている表情に
恐れを感じて目をぎゅっと瞑り手のひらを強く握り締める。



グロールフィンデルは一度大きくため息をつくと、また池を移動し岸までを移動させる。


地面にを降ろすと自分の上着を脱ぎ、全身ずぶ濡れの彼女の身体に着せる。


グロールフィンデルとの身長と身体の大きさの差のせいで、
その上着でさえ裾が地面についてしまう。





「姫、一先ず湯浴みをしてきてください。
 そのあと卿の下で一体何があったのか話してもらいますよ。」


「えっ…父上に…?」


「当然です。エルフの目と耳には姫が池に入ったことも叫んだことも全て伝わりますよ。」



跪いての目線にあわせて話すが、その口調はいつもより厳しい。




「王子達もですよ。とりあえず姫が湯浴みをしている間に、人の子の街に行ったという事を
 詳しく話してもらいますよ。」



「「ええっ!!」」



エルラダンとエルロヒアは同時に“ヤバい”という表情になった。

そんな二人の頬にはの小さな手形がくっきりと残っていた。






引きずられるようにグロールフィンデルに連れられる双子。


は少し距離を置きその後を追った。




ずっと握り締めていたその小さな手には
水に落ちてしまい濡れてしまったエレストールの髪留めがあった。



それを確認するかのようにしっかりと目に焼き付けると安心したかのように少しだけ微笑む。







そして、身体を温めるために少し小走りに湯殿へ向かった。




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2004/03/21



ヒロイン、あの双子をビンタしましたね…。

そして、いつもはヘタレなグロールフィンデルが立派に武官長に見える…(失礼


次はエルロンドパパが現れます。
どうでもいいですが、彼はエルフより某スミス氏のイメージの方が異常に強いですw
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