◆◇◆FIRST LOVE-seventh Story-◆◇◆







目まぐるしく変わる世の中。


しかし、不死といわれるエルフの時の流れは人間の目からすると本当に極僅かで。



だが、不変のものなどこの世の中にはない。


エルフといえど変わることもあり。

それは人間のそれに比べるととても僅かだが、エルフ、とくに子供には著しく表れることもある。








ここはエルフの都、ロスロリアン。


銀色の木々に囲まれたこの清浄な空気はまさにエルフの楽園。

人間の入り込める隙などない。



は顧問長のエレストール、武官長のグロールフィンデル、
そして彼が率いる武官たちに守られながらこの楽園へと遊びに来た。



「お久しぶりです、姫」

仰々しく迎えてくれたのはロリアンの警備隊長ハルディア。


「久しぶりね、ハルディア」

にっこり笑いかけるとハルディアは胸に手を当てエルフ式の敬礼をした。


「さぁ、ケレブリアン様達がお待ちですよ」

「えぇ、すぐにいくわ」


今まで何度となく訪れた場所だ。

どんなに入り組んでいても、は迷うことなく進む。



「姫、私とグロールフィンデルは先にケレボルン様と奥方に卿からお預かりした
 書状を届けに行きます」

エレストールは細かい装飾が施された筒状の書状入れをに見せる。

「ええ、分かったわ。
 あたしもお母様たちに挨拶したらおじいさまに会いに行くね」


そう言うとは我慢できないというように小走りになり
母や姉のいる奥の部屋へと向かった。


“走って転んだりしないでくださいよ”というエレストールの言葉が
聞こえていたかどうかはいまいち理解しかねる。











さて、ハルディアに案内されたエレストールとグロールフィンデルは
謁見の間へと向かう。


向かう途中グロールフィンデルが襟元崩しているのを目ざとく見つけた
エレストールが無理やり締めてやる。

その様子にハルディアが“まるで夫婦だな”と肩を竦めた。




長い階段を上るとそこにはすでにロスロリアンの領主ケレボルンと
その奥方、光の姫の名に相応しい美しいエルフガラドリエル。


「遠路はるばるよく来た。
 今夜はそなた達のために宴を開こう」

ロリアンの統治者であり高貴な存在でもあるケレボルン。

だが、彼は威厳がある、というよりはとてもおっとりした
まるで春の陽気のようなエルフだった。


「お心遣いまことに感謝いたします」

エレストールとグロールフィンデルは目を伏せエルフ式の感謝の意を表す。



「こちらが我らが主、エルロンド卿より承った書状でございます」

先ほどに見せた書状の筒を見せると近くにいた侍女に渡す。



彼女は丁重にそれを手に取るとゆっくりと優雅な物腰でケレボルンに手渡した。


それをケレボルンはガラドリエルとともに目を通すと少しくすりと笑った。


「どうやら今回エルロンドも共にこちらに来たがっていたようだな」

書状の内容をよんでそれを察したケレボルン。


内容にはケレブリアンやアルウェンについて何かあったら是非教えてほしいといった内容。


ちなみに今回エルロンドが来れなかった理由は溜まりに溜まった書類の処理に追われたから。








「あの…ケレボルン様……」


控えめに声をかけたエレストールに、ケレボルンはにっこりと笑顔で返した。


「今回姫や、さらにグロールフィンデルや私までロスロリアンにお呼びになったのは
 何故ですか?」


実は今回のロリアン訪問はケレボルン直々に書状で
と、裂け谷顧問長、武官長に至急来るように、といったものだった。


かわいい孫娘のだけならまだしも、エレストールとグロールフィンデルの
指名も共にあるとなると疑問も覚える。



「可愛い孫娘にはやはり信頼できる方に護衛して頂きたいわ」


ケレボルンの横でどこか裏のある笑顔のガラドリエル。


信頼できるといわれて嬉しくない訳ではないが。


エレストールとグロールフィンデルはお互い目を見合わせる。




するとケレボルンが少しだけまじめな表情をして口を開いた。




「そなたたちは闇の森のスランドゥイルを知っているか?」


今までの話の経緯からはまったく連想のない発言に驚く。


「直接的には存じませんが、闇の森の王ですよね」

グロールフィンデルの見解には間違いがないのでケレボルンも頷く。



「近年オークどもの勢力も強まりわれらエルフは衰退の一途をたどっておる。
 だからこそそれら闇の勢力に立ち向かうためにも
 今こそ全エルフが協力しなければならない」

“だが”とワンテンポ置く。



「スランドゥイルは闇の森以外のエルフとは交流を持とうとはしない」



それには理由がある。


最後の同盟の戦いにてスランドゥイルの父、オロフェアが戦死したのだ。


たとえ不可抗力とはいえ、それからスランドゥイルはノルドールエルフを嫌っていた。

そして、それから他のエルフとの関わりを一切絶ったのだ。



「裂け谷でも幾度となく書状を送っておりますが、返事は一度たりとも…」


するとケレボルンは1枚の書状をエレストールとグロールフィンデルに見せた。


そこにはおおよそ公に向けられるような
形式に乗っ取って書かれたものとは遠くはなれていた。


まるで走り書きのような文字で以下のように書かれていた。



『何度使者を送ってこようと無駄じゃ。
 わしはそなたちと関係を持つ気にはならぬ。
 だが……』


その次の文を読んで彼らは驚愕した。








『ルシアンの再来と名高いエルロンドの娘を使者として闇の森へ送るのなら
 多少なりとも考えてやろう』



ルシアンの再来、つまりこれはアルウェンのことだ。

夕星姫と名高いエルフ1の美女、アルウェンの評判は闇の森にまで届いていたようだ。



「…これは一体どういうことでしょう?」


引きつる頬を押さえながら言うエレストール。



「まぁ、あの男のことだ。
 まさかアルウェンと引き換えに、
 という意味ではなく純粋にあの子の美しさを見たいのだろう」


さて、と本題に入るケレボルン。


「なぜ余がそなた達を呼んだかというとだな…」


するとその続きはガラドリエルが答える。





「おとなしくアルウェンを行かせるより、を行かせて驚かそうと思ったのよ」








それには再び驚くしかない裂け谷の双璧。

近くではハルディアが心の中でため息をついてた。



「お、お待ちください!
 幾らケレボルン様や奥方の命とはいえ姫を闇の森へ向かわせるのは…」



“反対だ”と言葉を繋ごうとしたら、ちょうど後ろから噂のが現れた。




「お久しぶりです!!ガラドリエル様!!おじい様!!」


はうれしそうに駆け寄るとその勢いのまま二人に抱きついた。

まったく礼儀も何もあったものではない。


だが、久々の孫娘との再開に二人は無礼も気にならないようで頬を緩めっぱなしだ。







「ところでや。
 闇の森へ少し使いに行ってはくれないか?」



再開の喜びのついでにケレボルンの頼み。

エレストールとグロールフィンデルは絶句する。


しかし、彼らの思惑など知る由もなくは二つ返事で答えた。



「闇の森?もちろんいいですよ!!」


にとってはめったにない外へ行くチャンス。



悩む理由などなかった。





と、いう経路と理由でと双璧の闇の森行きは決まった。


しかし、これが本当に美と教養の種族エルフなのかと思うと疑問が残るのは何故だろう。



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2004/08/11



はい、今回は闇の森です!

以前から書いてほしいとリクエストが多かった彼が出ますよ!!


さて、ケレボルンとの謁見いついてですが、何故グロールの発言が少ないといいますと、
彼が口を開くと頭が悪いのがバレるので、事前にエリーから黙ってろといわれたからw


きっと彼にとってはこの謁見も堅苦しくていやだったでしょう…
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