のその返事からあとの行動はすばらしいくらい俊敏だった。


食料を主とした旅の必需品を詰め込むと準備は万端。



の闇の森行きを最後まで反対していたエレストールとグロールフィンデルだったが、
誰に似たのかケレブリアンとアルウェンがそれにOKを出してしまい渋々承諾。



旅に行く前にエレストールは道の確認、グロールフィンデルは剣の手入れや
に護身術のおさらいをする。





そして1週間が経ち、とうとうたちが闇の森に行く日。


一度裂け谷に戻ろうと提案をしたが、それでは確実にエルロンドが止めるため却下。

場合によっては自ら闇の森へ乗り込むだろう。




さてとうとう出発、というときに一つ問題が浮上した。


「何故、武官達は連れて行けないのですか!?」



たくさんの不満が積もりに積もったのだろうエレストールが大声を上げた。


それにはグロールフィンデルも同意のようでその表情には怒りが見える。



「行かないわけではありません。
 彼らには別行動をとって頂き、オーク狩りをしてもらいます」


と、いっても先日からロリアンの兵士がオーク狩りを
しているのであまりいないかもしれません、とコロコロ笑うガラドリエル。


「し、しかし!!闇の森へ行くんですよ!?
 万が一王が我らを敵と見なしたら…」

「ああ、それについてだが…」


ケレボルンは苦笑いをした。



「先日ロリアンの部隊の4分の一の兵を闇の森へ向かわせたら…
 逆に戦争を起こそうとした、といって反撃されたのだ」



つまり、謁見したいのであれば少数で武器は最低限持ち込むな、ということ。



これには武官長も顧問長も頭痛を覚える。


と、同時にそんな彼らに長い間仕えてきたハルディアを尊敬するばかり。





「ね、そんなこといいじゃない。
 早く行きましょう」


周りの心配は余所には初めて行く地への期待が大きいらしくはしゃいでいる。



「しかし…姫……」

「安心しなさい、エレストール」


不安そうな彼をなだめるようにいうケレボルン。


「あの者とてエルフを纏め上げる者だ。
 礼儀は無くとも一人のエルフとしてはできた男だ」


多少の不満はありそうだが、エレストールは一度覚悟を決めると
丁寧にケレボルンに頭を下げた。






「じゃ、行ってきま〜す!!」


馬に乗りながら大きく手を振るをいつまでもロリアンに住む者たちは見送っていた。



「ところでガラドリエル」

「何でしょう、殿」

「今回アルウェンではなく、を闇の森へ行かせたのには理由があるのだろう?」


するとガラドリエルはくすくすと笑った。



「スランドゥイル王にはご子息がいたはずです。
 彼と会って楽しいことになりそうなのはアルウェンよりだと思いません?」


妻の言い分に多少驚きながらも確かに、とにっこり笑うと、
ガラドリエルの手をとり中へとエスコートした。










さて、こちらは道中のたち一行。


さすがロリアンの兵士や裂け谷の武官達がオーク狩りをしただけある。

オークの姿どころか気配すら感じない。


替わりといわんばかりに姿を現す小動物や小鳥達。



心地よい陽気でも無意識の内に歌いだす。

その伴奏のように転がる馬具の鈴が耳に残る。



裂け谷にいただけでは体験できなかったであろう、こんな楽しい旅路にはご機嫌。


もちろん歌だけではない、エレストールと歴史の暗唱したり
言語学や薬草学の復習もする。

(グロールフィンデルは嫌そうな表情だったような気がする)



さて、温かい太陽も一日中地上を照らしているわけは無い。


あたりまえのように夜がくる。


ちょうど水辺に出た3人は馬を休めながらそこで野営をすることになった。




「じゃあ、私は見回りをしながら薪をあつめてこよう」

グロールフィンデルはアスファロスを休めながらいうと闇の中へと進んでいった。


エレストールは着々と野営の準備をする。


「姫、やはり野営は多少なりとも不便を感じると思いますが、
 何か不都合がありましたらなんなりと申してください」

どうやらにとって初めての野営のためエレストールは必要以上に
を気にかけているらしい。


「うん、ありがとう。
 でも大丈夫よ、こんな満天の星空の下で眠れるのだもの。
 こんな楽しいことないわ」



顧問長達の不安は余所に、は意外にもこの状況を楽しんでいるようだ。











パチパチと木が燃える音が響く。

それを囲むように3人向かい合って道順やこの先のことを話し合う。



どうやら順調に進んでいるようでこの調子ならあと3,4日でつきそうだ。



なんの滞りも無いのならあとは体を休めるのが先決。

最小限に抑えた持ち物の中からガラドリエルより受け取ったレンバスを取り出す。


これは一見普通の焼き菓子に見えるが、実は上古よりすばらしい効果を受け継いでいた。

一口で大人一人が満腹になり(エルフ基準だが)栄養素も豊富。


これでのどの渇きが潤せるのなら完璧なのだが。


エレストールは用に小さく割ったレンバスを手渡す。


グロールフィンデルはとっくに食べていたようだ。

エレストールも一口齧る。



が、当のはいつまでもそのまま。


「姫?いかがなさいました?」


「……あたし…実はあまりレンバス好きじゃないのよね…
 ガラドリエル様には悪いけど…」


それには少し驚く二人。

まぁ、好き嫌いはそれぞれだが非常食を嫌うとなるとなかなか困ったものである。


ちなみにこのことは後の指輪戦争の際でも色々困ったことになる。



「しかし、食べないと体に悪いです。
 旅の途中ですし少しは無理をして食べないと」

「そ、そうよね…」


意を決したはレンバスの欠片を口に放り込むと水を一気に飲み込みため息をつく。



その後、が気づかないところでエレストールがグロールフィンデルに
“明日からは見回りついでに果物も採ってきなさい”と言ったとか。


「そういえば、ずっと気になっていたんですが」


グロールフィンデルが思い出したように口を開いた。


「姫はどうしてケレボルン様はおじい様と呼ぶのに
 ガラドリエル様はおばあ様と呼ばないんですか?」

それにはどうやらエレストールも同じ思いだったらしい。


同じタイミングで二人に見つめられは冷や汗をかく。


「…あたしが直接的に関係あるわけではないんだけど…」







がまだ生まれる前、双子の兄達がまだくらいだったとき
彼らが大声で『おばあさま〜!!』と呼んだのだ。


そのときに、ガラドリエルは一瞬にして表情が変わり、
メルコールも土下座をしそうなオーラを放った。


そして一言。



「女性におばあさま、とは言ってはいけませんよ」



じゃあどうしろ、と思うのだが、その日からしばらくそのときのガラドリエルが
忘れられずエルラダンとエルロヒアはうなされ続けた。



「と、いうわけでガラドリエル様には間違ってもおばあ様とは言ってはいけない、
 とお兄様たちに教えられたのよ」



それには双璧たちも冷や汗を掻きながら納得せざる終えない。










そんな調子で旅は進んだが、すべてが順調に進むわけが無い。


闇の森に近づいたころに、その辺り一帯大雨に降られたのだ。

視界は最悪。



さらに、気のせいなら嬉しいのだがどこからかオークの気配を感じた。


グロールフィンデルはいつも以上に気を張り詰めている。




「グロールフィンデル!!今日はこれ以上進むのは無理です!!
 ここで野営しましょう!!」


雨音のせいで声も聞こえにくくなるので自然と大声になる。


「だめだ!!おそらくオーク共が近くにいる!!
 今日は進める限りすすもう!!」


そんな二人のやりとりに不安そうな


雨に濡れて体も冷え切っている。

自然と小刻みに震える。


そんな状況にエレストールか唇をかんだ。





そんなとき、がさり、と草同士の擦れる音が聞こえた。

そこにいたのはグロールフィンデルの予想通り十数人のオーク。



禍々しい形の剣を持ち、雨に濡れた彼らの体からは粘着質な液体が流れ落ちる。



「ここは私一人で十分だ!!
 エレストールと姫はこの先へまっすぐ走っていけ!!」


グロールフィンデルの指差した先には闇の森の入り口につながっていた。


エレストールは力強く頷くと、グロールフィンデルを不安そうに見ていた
呼びかけ馬で全速力で駆けた。


後ろからはオークたちの叫び声と肉の切れる音。



「グロールフィンデルなら大丈夫です。
 彼ならあの程度のオークなんて相手にもなりません」


をなだめるように言うエレストール。

未だに不安はあるもものは自らの剣の師を信じることにした。



だが、悪いことは重なるもの。


闇の中に光る無数の赤い丸い光。


「あれ……何…?」

がおそるおそる指差した先。


エルフの目でそれを確かめるのはたやすいこと。


だがたまにはそれも信じたくなくなる時だってある。



「蜘蛛……」

エレストールのつぶやきと同時には悲鳴を上げた。


そこには大きな蜘蛛が7,8匹集まっていたのだ。

その様子から大人しい習性とは思えない。


たとえ大人しくてもお目にはかかりたくない。


「くっ!!」

を守るようにエレストールは前に立つと懐から短剣を2本取り出し構える。


相手が蜘蛛1匹くらいならエレストールにも勝機はあったかもしれない。

だが、相手はもっと数がいる。


グロールフィンデルと共に戦って勝てるかも少し危うい。



だが、そこで逃げ出すような男ではない。

口の中でヴァラールへの祈りを唱えるとその蜘蛛へ向かっていった。


器用にうごめく足をうまく交わし、腹部を切りつける。



そこからは血、というよりは体液に近い緑色の液体が噴出した。


だが、それも大きいダメージではないようだ。

すぐに蜘蛛も反撃に出る。


はその恐怖のあまり立ち尽くしているだけだった。


「だ、誰か…誰か助けて…グロールフィンデル!!」


オークと戦っているグロールフィンデルに助けを求めるが、聞こえているかも定かではない。




このままではいけない。

このまま守られているだけでは一体何のために今まで剣を学んだのだ。



先日誕生日のときにケレボルンからもらったエルフの剣を鞘から抜き構える。


今まで実践なんて経験は無い。



そのため柄を握るその手は震えている。


だが、はエルフの中でももっとも勇敢で強いと詠われるフィンゴルフィンの
血を継ぐ者。


今一度剣を握りなおすとエレストールに加勢するように蜘蛛たちに向かっていった。


さすがは身軽なは相手の牙を交わすとその頭に向かってきりつけた。


力は無いもののどうやらそこが弱点らしく、蜘蛛は大きく鳴き暴れだした。



「姫!!」

エレストールの声が聞こえたような気がする。


だが、それを確かめる前に蜘蛛からの執拗な攻撃が繰り出される。


避けるだけで精一杯。



だが、蜘蛛たちは遠慮せずどんどん攻撃を仕掛けてくる。

エレストールもを守りに行きたいが攻撃がしつこく近づくこともできない。




そのとき、ある蜘蛛の鋭いつめがに向かって振り下ろされた。


「姫!!」


突然のことでは悲鳴を上げることもできない。


もうだめだ、きつく目を閉じたとき、ひゅん、と風をきる音が聞こえた。


それと同時に今まで一番大きく鳴く蜘蛛。


がおそるおそる目を開けるとそこには無数の矢の嵐。


こんな雨の強い中でもその威力は失うことをしらない。


蜘蛛たちの急所を仕留め確実に倒していく。




呆然としりもちをついている

そのとき、ある1匹が最後の力を振り絞りに襲い掛かろうとした。


駆け寄るエレストール。

それよりも先にの目の前には濡れた金色が広がった。



その金色は髪の毛でその持ち主はの前に立ちその蜘蛛を短剣で切り捨てる。



「グロールフィンデル…?」


金髪のエルフで心当たりのあるのは武官長だけ。


だが、その金髪は彼のほど深い金色をしてはいなかった。



金と銀の織り交ぜられたプラチナ。

背格好はほかのエルフ達に比べると小柄だがしっかりとした骨格。


彼は蜘蛛が死んだことを確認すると周りにいるほかのエルフ達に命令をだす。



「この辺りの蜘蛛はおおよそ片付いた!!
 あとは深追いするな!!」


するとほかのエルフ達は弓を射るのをやめほかの蜘蛛の生死を確かめる。



「姫!!大丈夫ですか!?」


大急ぎで駆け寄るエレストール。

「なんて無茶を…もしあなたの身になにかあったら私は…」

心配しながら怒るエレストール。


は昔似たようなことがあったな、と意外に冷静だった。



「大丈夫ですか?」

急に頭上から声が聞こえた。


それは先ほどを助けてくれた金髪のエルフ。




振り向いた彼はこの闇の中でも輝く美しい緑色の瞳。


エルラダンとエルロヒアより少し年下だろう、
だがどこか上位の者独特の風格が漂う。



「あ、貴方は…?」


すると彼はにっこりと笑うとの目の前に跪いた。



「私はここ、闇の森の王スランドゥイルの息子、レゴラスです」



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2004/08/11


来ましたよ!!

ファンの方、お待たせしました!!

レゴラス王子ですw


もう出したくて仕方が無かったですw

さて、一応原作よりレゴラスで書こうと思いますが、
オーリィなお色気担当レゴラスもいいなとw
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