レゴラスが率いるエルフの一軍がすっかり蜘蛛たちを片付けたころ、
オークの軍を片付けたグロールフィンデルがとエレストールに追いついた。


「姫、申し訳ありません…オーク共が数を増してきたので助けに行くことができずに…」


悔しそうにに謝罪する。

「ううん。気にしないで。
 あたしはこうして無事なんだし、グロールフィンデルも無事でよかったわ」


は笑いかけるが、彼は自分自身が許せないようで
苦笑いで答えるしかできなかった。



「しかし…彼らは……」



レゴラスたち闇の森のエルフを不振そうに見るグロールフィンデル。




しかし、レゴラスは全く気負いすることなく笑顔で返す。


「さぁ、雨も強くなってきました。
 我が王の岩屋へ案内しましょう」


そう言うと指笛をぴぃっと鳴らす。

するとどこからか彼の馬が雨の影響も受けず俊敏に主の元へ駆け寄ってきた。


「さぁ、急ぎましょう。
 また蜘蛛たちが来たら面倒ですからね」



まだ警戒心は解けないが、今は従うしかない。

たち3人は目を合わせるとそれぞれが自分の馬に乗り彼の案内についていった。










馬で駆けること約30分。


目の前に見えてきたのは大きな橋と門、そしてそれらに守られた岩屋。


全体的に開放的な裂け谷や、木々と共にあるロスロリアンとくらべると
殺風景で冷たい印象を受ける。


見慣れない風景に圧倒されながら、たちは馬を進める。


ゆっくりと開かれた門をくぐると岩屋への入り口へ。

そこで皆馬を降り手綱を引いて中へ入っていった。




中はやはり薄暗くて寒々しい。

は少しだけ身震いする。


本当にここにはエルフがいるのか、そんな疑問さえ浮かぶくらい。



「馬はそこにいる者に預けてください。
 彼らがきちんと厩まで連れて行ってくれますから」


レゴラスの指差した先には数人の武官らしいエルフ。



、エレストールはすぐに渡したがまだ少し警戒しているグロールフィンデル。

自分の愛馬、アスファロスの毛並みを撫ぜ耳元で何かを話すと
名残惜しそうに彼らに手綱を預けた。





「では、こちらになります。
 着いてきてください。
 あ、暗いので足元に気をつけてくださいね」


再び案内を再開するレゴラス。

手に蝋燭を立てた職台を持ちゆっくりと松明のともっているその空間を進む。


たちの歩いている両隣にはとても大きく太い柱が等間隔に並んでおり
石造りのせいか歩いている足音さえ木霊する。




しばらく歩き続けると一つの扉の前に着いた。


「さぁ、着きましたよ」


その扉を開け放つと中からまばゆい光が零れだした。


本当に今まで歩いてきた岩屋と同じ場所なのかと疑いたくなる。

数々の彫刻や絵画、それらが眩いばかりの装飾に囲まれていて。


この広い空間を金色の彩っている。



するとある一室から数人のシンダールエルフの女性が現れた。


「おかえりなさいませ、レゴラス王子」

ドレスの裾をつまみ丁寧に頭を下げる。


だが、すぐに彼女達はたちを見据え驚いた表情になる。


「ああ、彼らは客人だよ。
 そこで蜘蛛に襲われているところを助けたんだ。
 雨ですっかり濡れている、疲れを癒してやってくれないか?」


レゴラスが簡単に説明するものの彼女達はまだ戸惑った様子。

それもそのはず、ここ闇の森の王国には客人はほとんど無い。


彼らはいつも隠れて生活しているから。


侍女たちは戸惑いながらも了解すると、二人ほどの元に近づき
残りはエレストールとグロールフィンデルにつく。


「れ、レゴラス王子!?」

勝手にすべてを決められても黙っているわけが無い。



だが、彼は有無を言わせない笑顔答えた。


「父と話したいのでしょう?
 でしたらまず湯殿で身を清め温まることが先決では?」


は改めて自分の姿を見てみる。

雨と泥に汚れぐちゃぐちゃ。

ところどころに蜘蛛の体液もついている。


いつも裂け谷にいるときは身奇麗にしていただけに今の格好は恥ずかしい。


「…分かりました……」


諦めたように了解するとは侍女たちについてゆく。


「姫!」

後ろから呼び止めるエレストール。


「大丈夫よ。
 安心して」


首を傾げて笑顔で答えるとエレストールの返事を聞く前には彼女達と共に
その場を去った。








おそらくハーブの類だろう、裂け谷には無い香りのする湯に入り
すっかり汚れと旅の疲れを落とされる。

綺麗になったに出された衣服は深い緑色のドレス。


裂け谷では白を基調とした淡い色のドレスのせいか、
その緑色のドレスはには物珍しく少し嬉しくなった。







すっかり身支度が整うと先ほどエレストールたちと別れた広間に再び案内された。


そこには湯浴みが済んだエレストールとグロールフィンデルが先にいた。


「おまたせ」

彼らもすっかり汚れが落ち、ここの服を着ている。

同様深い緑色の服のせいかいつもと雰囲気がちがう。



「では王がお待ちです。
 こちらへどうぞ」


をつれてきた侍女たちが案内する。

王の謁見の間へ行く途中、エレストールはに小声で話し始めた。


「姫、我々は確かに客人と言われましたが、
 ここにはノルドールに恨みを持つエルフもいます。
 お気をつけください」

グロールフィンデルに至ってはここにきたときからずっと気を張り詰めている。


エレストールの忠告には少し悲しくなるものの小さくこくんと頷いた。




「ここが謁見の間になります」

侍女が中にいるであろう王に声を掛けるとゆっくりとその大きな扉を開いた。


中へ促されるたち。


が真ん中をあるき右にエレストール、左にグロールフィンデル。


彼らはそのままゆっくりと歩みを進める。


すると目の前に玉座に座っている王らしき人物。



シンダールらしい金髪はとても長く波打っている。

瞳は森の緑のようにとても力強い。

頭には花や木の実を使って作られた冠がある。


明らかに今までに会った武官や侍女たちとは違う。

王の貫禄があるエルフ。


しかし、彼の隣のサイドテーブルにある数本のワインのビンはいただけない。


の予想とは反している王のイメージに少し戸惑いながらも
エルロンドの娘として、またケレボルンに遣わされた者として挨拶をする。


「ロスロリアンの領主、ケレボルン卿より遣わされて来た…」

そこまで言うと、王は玉座から降りゆっくりと近寄ってきた。




「ほぅ…まさか本当に来るとはな…
 さすが、噂に違わぬ美しさ…」


そこまで言うと、の右隣にいたエレストールの手をとる。


「ルシアンの再来と詠われる乙女だ…
 夕星姫の名に相応しい」


驚きのあまり3人とも固まる。

だが、この中で一番驚いているのはエレストールだろう。


確かにこの中で黒髪のエルフはエレストールだけだが、
まさか女に、さらにこの世でもっとも美しいといわれる乙女に間違われるとは。


「あ、あの…王…」

グロールフィンデルが間違いを訂正しようとするがうまい言葉が見つからない。

だが、代わりといわんばかりに答えたのはだった。



「王、彼はエレストール。
 裂け谷の顧問長で男性です」


必要以上に“男性”の部分を強調した

いくらだって自分の想っている相手を女と間違えられるなんて悔しくないわけが無い。



「…何?」

驚きの表情の王。


“まことか?”とエレストールに尋ねると怒りだすのを抑えるように無言で頷いた。

すると急に不機嫌そうになる王。


「ではわしが書状で言った夕星姫は?」

あの書き方が本当に書状のつもりか、と突っ込みたかったが
引きつる頬を押さえながら笑顔で言う。



「夕星姫、アルウェン=ウンドミエルは姉です。
 ケレボルン卿に遣わされ私が変わりに着ました」


するとようやく王はのほうを見た。


「夕星姫の妹?」

「私は裂け谷のエルロンドの第4子と申します。
 あと、先ほど言ったとおり右にいるのはは顧問長、エレストール。
 左にいるのは武官長のグロールフィンデルです。」


ドレスの裾を持ち丁寧に礼をする。

だが、王はそれ自体には興味が無いのかの顔を見るために
顎に手を掛け思い切り上を向かせる。


「お、王!一体何を…」

グロールフィンデルが声を上げるが気にすることなくの顔をまじまじと見る。


そして一言。



「…ガキか…つまらん…」


今まで我慢していたもとうとうブチぎれる。

顎に掛けられた手を振り払い思い切り怒鳴りつける。


「いい加減にしてよ!!
 国の王だからってそんな失礼な態度許されるわけ無いでしょ!!」


の本音が出てエレストールとグロールフィンデルは
頭を抑えてため息を付く。


だが、止めないあたり二人ともに同意ならしい。



「大体ね、人が来たっていうのに挨拶も無い、人の話も最後まで聞かない、
 セクハラまがいの台詞でさらに酔っ払い!?
 最悪ね!!」


呼吸もつかせず一気に喋ったせいか肩で大きく呼吸をする。

驚いたように瞳を見開く王。




はここで我に返り少し焦るが自分の言ったことを訂正するつもりも全く無い。


これで関係の復興の話は無くなったな、最悪の場合3人もろとも地下牢行きかも、
そう考えたとき、王がの目線にあわせる様に屈むとそのまま覗き込む。



「………あの…王?」

あまりにまじまじと見られるため居心地の悪さを感じる。


すると王はいきなり大笑いを始めた。

今度は驚いたのはたちである。


理由を尋ねてもいつまで経っても笑うことやめない王。

笑いすぎて目じりに涙が溜まっている。


「くくくっ…面白い姫じゃ。
 気に入ったぞ」


まだ笑いが止まらないようだ。

すると彼はすっと立ち上がって改めて3人の前に立つ。


「わしはここ、闇の森の王スランドゥイルじゃ。
 そなたらを客人として歓迎しよう」



←戻る
4へ→

2004/08/14


なんだか突っ込みどころが満載なんですが…
とりあえず、この話は結構前から決まってたので…
(スランドゥイルがエレストールを女と間違えるとか…)

ところで私としては一番気になったのは、グロとエリは一緒に風呂に入ったのかということw

グロエレ…好きだったりするので…(ぇ
やはりヒロインの入浴シーンより男二人の入浴シーンを書くべきだった…(ぉぃ
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送