頬をなぞる柔らかい風。


何故か心休まる金色の光。


一面に青々とした草原が広がり、
ところどころに白い可愛らしい花が咲き誇っていて。



まさに楽園。



そう、普段ならこの絶景に心を奪われ感嘆のため息をつく。


だが、ここがどこなのか分かればの話である。



「こ、ここはどこですか!?」


もうは混乱している。

それもそのはず、は生まれてこのかた、裂け谷とロスロリアン以外に行ったことがないのだ。

それについ先ほどまで裂け谷内の秘蔵書庫内にいたはず。



どんなエルフでも動揺するはずだ。


だが、意外に冷静だったのが双子のエルラダンとエルロヒア。



「まいったね…。どうする?エルロヒア。」

「どうしよっか?エルラダン…。」


お互いの顔を見合わせて肩を竦める。


「な、何冷静になっているんですか!?いきなり別なところに来ちゃったんですよ!!
 谷に帰れなかったらどうしよう!!お父様たち心配するわ!!
 エレストールなんてすっごい怒るし…。」


こんなときに叱られる事を考えるということは、
やはり怒ったエレストールはバルログにも増して恐ろしいということ。


「でも、冷静に考えないとこういうときは解決しないよ。」

「そうそう、それにが無事ならエレストールに叱られるのは半分で済みそうだし。」


のことを可愛がっている顧問長なら多少なら叱られるのも免除されるだろう。

まぁ、逆に心配させたということで倍に罰が与えられそうだが…。



しかし、ここまで冷静な双子はさすがなのかもしれない。

だてに谷を抜け出してオーク狩りの旅をしていることはある。


「で、でも…やっぱりきゅうにこんなところにきて…それにあたし寝衣のままだし…。」


改めての格好を見ると、先日の誕生日にケレブリアンが作ってくれた
白く美しい寝衣のまま。

それはワンピース型で胸下のところでリボンで絞られそのまま裾に向かって広がっている。

いたるところにフリルやレースがついていて羽のように軽い。



「大丈夫だって。」

「可愛いよ〜。」


さすが妹馬鹿。

こんな状況でもにジャレ付くことが出来る。

だが、当のもまんざらではない。


「え〜。そうですか?嬉しいな〜。これ可愛くってすごいお気に入りなんです。
 ほかにも薄いピンクやブルーもあるんですよ。」


褒められて上機嫌のとほのぼのとの髪を梳く双子。




こんなほのぼのとしていていいのだろうか…。







が、そんなわけがある筈がない。


一瞬にして双子の表情は厳しいものになる。






その理由はエルラダン、、エルロヒアと座っている
の両隣に銀色の刃が挟まれたからだった。





「何をしている。」


後ろから男性の威嚇の声が聞こえる。


カチャリと柄が鳴る音がした。



は始めて突きつけられた刃に恐怖で震えている。


動けなくなっているだが、さすがグロールフィンデルに長年鍛えられている
双子の動きは素早かった。


二人がを抱えるとその刃が動く前にさっと逃げる。





だが、どうやら相手は2,3人ではなく大人数だったらしい。

すぐに馬で周りを包囲されてまた動きが取れなくなる。




よく周りを観察するとどうやらみなエルフのようだ。

格好、人数等から推測するとエルフの小部隊だろう。



皆剣を携帯している。


エルラダンとエルロヒアは警戒をしながら声を潜めて会話する。


「ラダン武器何が持ってる?」

「僕は長衣の下に一応レイピア持ってるよ。ロヒアは?」

「僕は短剣2本とナイフ数本あるよ。」

「分かった、じゃあロヒアはを守りながら僕を援護して。
 僕は相手を倒しながら逃げ道を作るから…」



さすがは双子、エルフでも聞き取りにくいくらい小さな声で作戦を立てる。

だが、そんな二人をよそには思いもよらない行動をとった。




「ま、待ってください!!あたしたちは実は道に迷っただけなんです!!」


目の前にいるエルフたちに駆け寄り必死に訴え始めたのだ。




「「!!」」



そんな妹を庇おうとすぐに駆け寄り、服の下に隠していた武器を構える。

「何をしているんだ!!」

「危ないだろ!!」


普段は温厚な二人からは考えられないくらいの剣幕で怒鳴られる。

だが、だって負けてはいはい。


「危ないってどうしてです!?同じエルフなんですよ!!」


すると二人はゆっくりと首を振った。



「よく見てごらん。彼らの剣の柄にある紋章を。」

「あれは裂け谷のものでもロリアンのものでも、灰色港のものでもない。」

「もちろん闇の森のものでもない。」



彼らはよく中つ国中を旅しているのだ。

殆どの軍隊の紋章を覚えている。


だが、見たこともない紋章の前で、しかも相手は剣を突きつけている。

友好的に話すのは難しいだろう。




「で…でも…同族同士なのは変わりはありません!!
 どんなことがあっても同族同士で剣を合わせてはいけません!!」


そのの訴えは双子だけではない、そこにいる軍隊のエルフにまで響き渡った。








「皆剣を納めよ。」


軍の後ろのほうから聞こえてくる燐とした声。

すると周りの剣を構えていたエルフの軍人たちはすぐに剣を鞘に収めた。



そして、その声を掛けた者を通すために道を開ける。



「そなたたちもだ。年若いエルフの青年たち。
 我らはすでに剣を収めた。」



開けられた道から現れたのは美しい白馬にのったエルフ。

双子との前に来ると軽やかに馬から降りた。



「…君たちは双子か?そっくりだな。」

エルラダンとエルロヒアを見て少しだけ柔らかく笑った。


周りが武装を解除したとはいえ、なかなか剣を鞘に収めなかった二人たが、
この隊のおそらく隊長と思われるその青年がその柔らかい態度だったためゆっくりと鞘に収める。




その青年エルフをは驚きの瞳で見つめていた。


驚くくらい長身で均等の取れた四肢。

おそらく双子たちよりは年上だろう、落ち着いたでもその瞳の奥には秘められた力強さがある。

しかし、それよりなにより目を惹くのは彼の燃えるような赤い髪だろう。







赤い髪…?

エルフには少なくとも赤い髪というとのは全く心当たりがない。


いや、それは現存するエルフということ。

過去にそれに相当するエルフは確かにいた。



だが、やエルラダン、エルロヒアのような第3期に生まれたエルフは会えるはずのない人物。



双子はその事実に気づいていないが、はまさかと疑念を抱いていた。


燃えるような赤髪のエルフというのは数えられる程度だったはず。

エレストールから歴史を学んだは教えをしっかり覚えていたのだ。


だが、それを目の当たりにしてもその本人であると信じがたいのは当たり前。




は少し難しい表情をし、エルラダンとエルロヒアは剣を収めたものの
未だに警戒をしている模様。


するとその赤髪の青年はまるで水のように静かな落ち着いた声で話しかけた。


「そなたたちは道に迷ったといったが…ではここはどこなのかは分からないということか?」


とりあえず3人は小さく頷く。


まさか気が付いたらここにいました、なんて自分たちも信じられらいのに
そんなことを名も知らない相手に言えるわけもない。



「そうか…ここは我が父の領地、ノルドールの長フィンウェの第一子、フェアノールの敷地だ。
 私はフェアノールの第一子マエズロス。」



「マエズロス!?」



思わずは声を荒げた。

驚く双子とマエズロス。


「「知り合い?」」


双子が声を潜めて尋ねる。

だが、当のはそんな兄たちの反応に驚く。


「お兄様たちは本当に勉強をさぼっていたんですね…。
 マエズロス様って言ったらほら…お父様とエルロス様がまだ小さかった頃に養父になって
 くださったマグロール様のお兄様で…同族殺しの…。」


全ては声を潜められての会話のためマエズロスには聞こえていない。


そして、双子はようやく思い出したようだ。



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2004/06/27

ようやくマエ兄現れました。

大好きです!!マエ兄!!

なんだかすっごい今回の話書くの楽しいぞ♪
読んでる方はどうかは分かりませんが…。
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