赤い髪をした双子が追いかけられてからはや10分。

いまだにつかまる様子は無い。



それどこか、追いかけているケレゴルム、カランシア、クルフィンは
疲労が見え始めているが、未だに追うことを止めない様子。



その中心ではもう慣れたものと優雅に紅茶をのむマエズロスとマグロール。

そして、さすが適応能力が高いエルラダンとエルロヒア。



一緒に談笑まで始めている。





が、その時、今までで一番の勢いで開かれた扉。




「煩いぞ!!静かにしろ!!!!」





そこにいたのは黒髪の長身のエルフ。

とても美しいその容貌、だがどこか冷たいナイフのような鋭さがある。



そして、そんな彼は不機嫌そうにその眉間に皺を寄せていた。


「すみません。父上。」


マエズロスは丁寧にそのエルフに頭を下げる。



マエズロスたちの父、つまり彼こそかの至宝シルマリルの製作者であり、
このアマンから中つ国へ渡った火の精の異名を持つノルド、フェアノール。





「ネアダネルはどこだ?」


辺りを見回しても美しい赤髪を持つ妻がいない。


するとその答えにはマグロールが答えた。


「今、母上は彼らの妹君のお相手をしております。」



そう言ってエルラダンとエルロヒアに手を差し伸べる。


だが、フェアノールはその表情に怒りの炎を見せる。



「何者だ!!貴様ら!!」



そう言うと即座に銀色に輝く大剣を手にする。


「お、お待ちください!!父上!!彼らは向こうの草原で道に迷ったと…」


マエズロスが抑えようと父の前に立ちはだかるが、それすらフェアノールには邪魔なものでしかない。



「だからなんだというのだ。たとえ同族であろうと
 我が砦に入り込むなど許さぬ。切り殺されたくなければさっさと出て行け。」


美しいからこそその気迫は恐ろしい。


剣を向けられてエルラダンとエルロヒアもひるむ。

だが、ここで諦めるような双子ではない。



とっさに近くにいたケレゴルムとカランシアの剣を奪おうと目で合図したとき、




再び扉が開かれたのだ。








「あら、フェアノール。こちらにいたのですね。
 工房から出られたと聞いていましたがお姿が見えませんでしたので。」


そこにいたのは場の空気には合わない優雅に微笑んだネアダネル。


「ああ、ネアダネル。湯浴みをしていた。」

寄り添う妻の肩を抱きよせ軽く口付けを交わす。



「しかし、この者たちは一体なんだ?」


未だにしまわれることの無い件の切っ先でエルラダンとエルロヒアを指す。

だが、ネアダネルはコロコロと笑いながら答えた。


「ええ、マエズロスが助けた方々でしょう?
 しばらくこの砦に置かれてもいいではないですか。」

「な、何を言っているのだ!?
 こんな素性も知れないものをここに置けというのか!?」

「もちろんですわ。
 今だってこんなに息子達がいるんですもの、今更増えたって大して変わりませんわ。」



本当にエルフの女性なのかと疑いたくなるくらいこのネアダネルと言う女性は
寛大というか、男らしい考えだ。


さすが息子を7人も産んだだけある。



「だが!!一体何処の誰なんだ!?」

「どこかは知りませんが、名前はエルラダンとエルロヒアと仰るそうです。
 星の名なんて素敵ではないですか。」


“それに…”とワンテンポ置くと半開きになったままの扉に向かって声を掛けた。




「いらっしゃい、。」



そう言うとその扉の影から申し訳なさそうにがゆっくりと現れた。



「「!!」」


ぱぁっと表情に笑顔が戻るエルラダンとエルロヒア。



が、二人はすぐに驚いた表情にある。


…」


「どうしたの?その格好…」




そこにいたはピンク色のフリルがたっぷりついたドレスに身を包んでいた。

後ろには大きなリボンがついており、そこから下にふんわりと裾が広がり膝丈まで降りている。



さらに、の真珠色の髪は綺麗に編まれそこにも大きなリボンがついており
結び目には金色の飾りまでついていた。



「可愛いでしょう?フェアノール。彼らの妹君のよ。」



そう、全てはネアダネルのコーディネート。

彼女は満足そうにをフェアノールの前へ連れて行く。



驚いたようにを見下ろすフェアノールと
怯えたようにフェアノールを見上げる



「いかがです?やっとこのドレスが役に立つときが来たんですよ。
 それに、ほら。この髪飾りは貴方が隠れて作っていたものでしょう?」



ぎくり、と浮気がばれたときのような反応を見せるフェアノール。


実はと言うと彼もひそかに娘が欲しかったのだ。

さすがにこうも息子ばかり続くとそう思うのは仕方の無いことだが。


だから、せめてもの慰みにひそかに隠れて女の子用の髪飾りや首飾り等を作成していたのだ。




「な、なぜそれを…」

「あらいやだ、貴方者を隠すとき決まって机の上げ底の下に隠す癖があるんですもの。」



どうやらこのノルドール一のエルフと謳われるフェアノールも
自分の妻にはめっきり弱いようだ。




「なんだか…ガラドリエル様とおじい様を見ている気分ですね…。」



小さく呟いたに双子は大きく同意を示した。





さて、これで問題が解決したわけではない。


「そ、それよりこの3人の子供をどうにかしろ!!」


びしっと指差す先にはを庇うようにたつエルラダンとエルロヒア。


「あら、こんな可愛い3人が増えたくらいで何をそんなに騒ぎ立てることがあるんです?
 喜ばしいことではないですか。」

「な、何が喜ばしいんだ!?絶対反対だからな!!」


いつまでも続くやりとりにだんだん飽きてきた息子達とたち。



さんも紅茶飲みますか?」

「ありがとうございます。」


マグロールからカップを受け取りゆっくりとその味を堪能する。


そして横から割り込んできたのは赤い髪をした双子。


「僕、アムロドっていうんだ。」

「僕はアムラス。僕たちは双子だけど、数分遅れで僕が末っ子。」




にこにこと話す二人。


は始めて自分に近い歳のエルフに出会えて嬉しくなった。


「あたしはよ。貴方たちも双子なのね。」


「うん。」

「そうだよ。」

のお兄さんも双子?」


二人の目線の先にはエルラダンとエルロヒア。


「ええ、そうよ。二人ともいっつも悪戯ばっかりで。
 でも、とても優しくて素敵なお兄様よ。」


「そっか〜。」

「僕らも悪戯大好きなんだよね。」


“あはは〜”と笑っていると後ろから現れたのはケレゴルム、カランシア、クルフィン。




「あはは〜じゃない!!」


ごんっ!!と鈍い音がして3人はそれぞれ双子に1回ずつ拳を落とした。


うるうると目を潤ませて殴られたところを抑えてこらえる双子。



さて、といわんばかりにその3人は今度はに目をやる。



「ふぅん…」

ケレゴルムはの顎に手をそえ思い切り上を向かせる。

そしてケレゴルムもの顔に自らの顔を近づける。



その距離わずか10センチ。


「あ・・・あの・・・」

するとケレゴルムはフッと笑った後こう言い放った。



「何だ、ガキじゃん。」


ピシイッと固まり呆然とする


「まぁ、元は悪くないからあと1000年したら良い女になるんじゃないか。」



にやりと笑うケレゴルムにはムッとしてその手を払った。



「失礼な人!!」


すると今度はクルフィンがの髪留めに手を掛けた。


「やはり父上は素晴らしい作品を作り上げるな…。
 美しい…。」


穴が開くほどのつけている髪留めに見入っているクルフィン。

「あ、あの…」


困ったように声を掛けるとクルフィンはやっと気づいたようにその手を離した。


「なんだ、クルフィン。このガキに惚れたのか?」

ケレゴルムがからかうようにクルフィンの肩を抱き笑うが、
クルフィンはあえてマイペース。


「父上の作品を見ていただけです。
 ケレゴルム兄上じゃあるまいし、僕は女性に見境なくありません!!」


ケレゴルムの腕を邪魔そうに払おうとクルフィンは不機嫌そうにソファーに座り本を読み始めた。


まだクックッと笑っているケレゴルム。

それを呆れるように見ているのはカランシア。



「全くばかばかしい。」

そう呟くのを聞いたのはだけ。

「でも、楽しそうではありませんか?」


無垢な瞳で彼を見上げると、カランシアは“くだらない”と言い捨てた。


「あら、そんなことありませんわ。
 私だって兄たちとくだらないことをいっぱいしてよく怒られましたもの。
 でも、それって凄く楽しかったし、良い思い出ですわ。」


まさか反論してくるとは思わなかったのだろう。

カランシアはその自らの特徴でもある鋭い目でをにらみつけた。


だが、当のはひるむ様子も無い。


あのエレストールの説教ですら止めてしまう効果をもつの笑顔。

にっこりと微笑んでカランシアを見上げると、彼は少しだけ頬をピンクにそめ
それを隠すように目をそらした。



ふと見るとエルラダンとエルロヒアがアムロドとアムラスたちと
過去の栄光もとい悪戯の数々を言いあって楽しんでいた。



「なんだ。なかなかなじんでいるな。」

「そうですね。」

その光景をのんびりと見ているマエズロスとマグロール。


そして、すぐそばで未だに言いあっている両親をみた。



「分かりましたわ、フェアノール。」

中々折れない夫にネアダネルは最終手段に出た。


「貴方が今すぐに娘を作ってくださるなら彼らの滞在を諦めますわ。」

どこかガラドリエルの笑顔を連想させるネアダネルの笑顔。

それに思わずフェアノールはひるんだ。


今まで連続7回息子だったのだ。

もうこれから何度子供を作っても息子が出来るようなきがする。


ふと目線をそらすとネアダネルによって綺麗に着飾った少女が
息子達と談笑している。


たしかに彼らが何かをたくらんでいるとは考えにくい。





それに、フェアノールも何だかんだ言って娘が欲しかったのだ。






「……仕方ない…。何か問題が起こっても予は知らぬからな。」






こうしてエルラダン、エルロヒア、そしてはフェアノール家の
滞在が承諾されたのだ。



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2004/07/05

やっとここまできました…。
長いな…。

どこまで続くのか私自身分からない…。


あと、ケレゴルムがナンパ男っぽくてすみません…。
どこかで彼をキザ男と定義つけているようです…。
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