◆◇◆FIRST LOVE-Third Story-◆◇◆










今日は大好きな顧問長、エレストールと野外学習ということで朝早くから裂け谷の結界内にある
自然豊かな森に来ていた。


辺りから聞こえる鳥の囀りや、木々のざわめき、葉の間から零れる木漏れ日。


美しく、静かなこの空間にだけでなく、普段から多忙で休む間もない
エレストールも心身が癒される気がした。




「姫、今日は薬草の種類、使い方を主に学んでいただきます。」


いつも書庫に篭ってイラスト付の書物で学ぶより、こうして直に体験した方が
何倍も身につくだろう。



「は〜〜〜い!!」



元気に返事をして手を上げるにエレストールが微笑みかける。




「これはアマという植物で主にかゆみやめまいに効きます。
 種子を磨り潰して少量の水を加え直接患部に塗ります。
 眩暈には根を4〜8グラムに水0.3リットルを加え煎じ、二分の一量まで煮詰めて服用します。」


一つ植物を見つけると長々と丁寧に説明をする。


双子の王子達ならきっとアクビ若しくはさっさと逃げ出して遊びに行っているだろう。



だが、は目をキラキラさせて顧問長の説明に聞き入っている。




エレストールだって自分の説明をそんなにも真面目に聞いてもらえると嬉しいので
いつもより多弁になる。



いくつくらいの薬草や木の実の説明をしただろうか、太陽はすっかり真上に昇りきっていた。




「もうこんな時間なんですね。少し休憩をして館に戻りましょう。」


緩やかに流れる川岸に着くと近くの岩に腰を下ろす。


「ねぇねぇ、川に脚だけ入れちゃだめ?」



水面から底が覗けるくらい浅いし、流れも緩やかで危険も少ない。

水だって綺麗だし何の問題も無いだろう。



しかし…



「いけません。春と言ってもまだ水が冷たいです。」

「大丈夫よ〜。あたしだってエルフなんだし、こんなに綺麗なのよ〜。」



眉を寄せて明らかに不満そうな顧問長。


自分の腰辺りの身長のを見下ろして唸るが、仕方ないと諦めて少しの間だけ許可をした。



「わ〜い!!」



いそいそと岩の上でブーツを脱いで足先を水の中に沈める。

岩の上に座り少し冷たいがさらさらと流れる水が気持ちよくて、パチャパチャと水面を蹴り上げる。



エレストールも初めはが水に落ちないか心配だったが、
楽しそうに水遊びをしている姿をみて頬を緩めていた。



が、しかしだってあの好奇心の塊、双子星の王子の妹。

彼女も好奇心旺盛で。



「あ!綺麗な石!!」


水の中で光る石を発見するや否や、岩の上から水面に手を伸ばす。

が、届くはずも無く手は水面をギリギリ触れるくらい。



“ん〜”ともっと手を伸ばすと自然と身体も前になり、ガクンと衝撃が走る。


「姫!!」





落ちる!!と目を瞑り身を強張らせると腹部に大きな衝撃と同時に浮遊感があった。




それはエレストールがの腹部に左手を廻し、片手でを支えてたから。




そのまま岩の上まで引き上げられてようやくを手放す。


は驚きでぺたん、とそこに座り込んだ。




「だから言ったでしょう!!危ないと!!」

「ご、ごめんなさい…。」



予想通りの怒鳴り声。

最近怒られる回数がめっきり減ったせいで、久々の彼の説教は堪えるものがある。




ふと、エレストールの声と同時にクスクスと笑い声が聞こえた。


まさか説教中に笑ったのかとエレストールがを見下ろすが、
は首を左右に振り自分じゃないと訴える。



それじゃあ一体…とあたりを見回すと、木漏れ日によってキラキラ光る金髪が目に付いた。



「「グロールフィンデル!!」」



それは愛馬アスファロスに跨り見回りをしている最中の武官長だった。



「姫今度は何をやらかしたんですか?」


少しからかい口調のグロールフィンデルには苦笑いをして
エレストールはジロッと睨み付ける。



「そろそろ館に戻ったらどうだ?卿が姫と昼食を摂りたがっていたぞ?」


そういえばもう昼時だったと思い出し、館に戻ることが決定。






さっき岩の上に脱ぎ捨てていたブーツを履き直し、岩から降りると
ぱたぱたとアスファロスに駆け寄る。



アスファロスは頭を下げに頬刷りをすると、はその額にキスをする。




グロールフィンデルは馬から軽やかに下りると、を抱き上げアスファロスの背に乗せる。


「じゃ、館に戻りましょうか、姫。」




手綱を引いて館に戻ろうとするとエレストールから呼び止められる。


「グロールフィンデル!!あなた見回りの途中でしょう!!仕事をしなさい!!仕事を!!」




「仕事なら先ほど終わったよ。君の怒鳴り声が聞こえたから来て見たんだ。」

相変わらずからかい口調の同僚にエレストールは苛立ちを隠せない。



「あたしが川に落ちそうになったのをエレストールが助けてくれたの。
 それで叱られたのよ。」





のフォローにグロールフィンデルは納得するとまた不適な笑みを浮かべてエレストールを見た。


「そんなことより!グロールフィンデル!!姫を一人馬上に乗せて落ちたらどうするんですか!!」

エレストールもそんな金華公に苛立ち無意味に八つ当たりをする。




「アスファロスなら落ちることは無いよ。」

アスファロスも自分の主の言葉に同調するかのように小さく嘶いた。



も馬上から“今度は大丈夫よ!!”とエレストールに声を掛ける。













「…それにしても……」


ふと、グロールフィンデルがとエレストールを見比べてつぶやく。



「エレストールと姫のやり取りを見ていると…」


そこまで言うとは小さく頬を染める。



はきっとグロールフィンデルが

『二人は恋人同士に見える』

と、言葉を繋ぐと思った。



最近は父の仕事場に潜り込む位エレストールと一緒に居るし、
彼との勉強の時は少し念入りに髪を編んでもらったりしていた。





が、の期待とは全く違う答えがグロールフィンデルの口から発せられた。




「二人とも母と娘みたいだな。」










金華公の言葉に2人とも絶句をする。


それから約5秒後エレストールによるグロールフィンデルへの回し蹴りが見事に決まった。



「誰が母ですか!!私は男です!!第一ケレブリアン様がいらっしゃるでしょう!!」



容赦なく顧問長からの攻撃を受ける武官長。

そんな光景を全く気にしないかのようにアスファロスだけがを乗せたまま館に戻っていた。






そして、はアスファロスの馬の上で呆然としていた。



母?

母上?

MOTHER?



何で!?







グロールフィンデルのふとした一言は、エレストールを怒らせ、自分の身を滅ぼし、
をしばらく悩ませるという力を持ち合わせていた。




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2004/04/03


はい、今度はグロールフィンデルが多く出てくると思います。
たぶんですが…。

ちなみにここに出ていたアマという植物ですが、実在します。

実物は見たことありませんが…。


あの二人大好きなんです!!
いつも飄飄としているけど、母が傷つけられたということで
オークを片っ端から殺しまくるダークなことろもある…。

父のエルロンドも双子で悲しい別れをしているので、
ラダンとロヒアはずっと一緒にいて欲しいです。

余談ですが、個人的にこの二人も中つ国から西の地へ旅立ったと信じてます…。
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