野外学習から戻りエルロンドとの昼食後、は紅茶片手に部屋に閉じこもっていた。



「う〜〜〜ん…」


一人椅子に座り雑誌を広げて唸っている。

ちなみにその雑誌は中つ国にいるティーンズエルフ(ぇ)のバイブル

『Sipper』


この場合“ティーンズ”という言葉に疑問を覚えるがそこは追求してはいけない。

毎号流行の服やメイク、ガラドリエルの星占い(ぇ)を掲載している人気雑誌の今回のテーマは




『中つ国エルフのガールズの彼氏彼女事情』





なんだかツッコミたいところは沢山あるが、ここもやはり追求してはいけない。

そしてが手を止めていたページとは…。




「理想のカップルの身長差は15センチ…」


読者アンケートページで沢山の体験談が書かれている。

その中の一文には呆然とする。




「…15センチどころかあたしの身長ってエレストールの腰あたりなのに……」


雑誌を握り締めて落ち込む。


「こんなだからグロールに母娘って言われるのよね…」



根本的には違うが、の中では身長のせいと勝手に納得されていた。








「ぃよっし!!こんなことしてないでどうにかして身長伸ばさないと!!」


勢い良く立ち上がると、飲みかけの紅茶もそのままに部屋を飛び出した。





そして向かう先は書庫。

エレストールは今日はある程度仕事が少ないので書庫の整理をすると言っていたのだ。



ゆっくりと扉を開くと中はランプによってオレンジ色の光に包まれていた。

そんな中でエレストールは脚立に登り本の整理をしている。



柔らかい光に包まれたエレストールは一つの絵画のように美しかった。





「姫、どうしましたか?何か御用が?」


几帳面に脚立から降りてに近づこうとするが、
がそれを静止してそのままでいいと言う。


「えっとね、いきなり変なこと聞くけど…エレストールって身長いくつあるの?」

「え?身長・・・ですか?」


不意を付かれたような質問に驚くが、少し考えてすぐ答えを返す。



「測ったのが姫が生まれるずっと前なのであまり正確ではないかもしれませんが、
 たしか180センチくらいだったと思います。」



元々長身の多いエルフの中では小柄な方だが、
子供で成長しきっていないにとっては大きいと感じずにはいられない。


自分との身長差を計算してショックを受ける。





(あたしと何十センチ差があるの!?
 で、でも人間で一年で10センチ伸びたっていう人もよくいるし、あたしも何年かかけたら…)


一人でブツブツと考えていると、心配になったのかエレストールが脚立から降りてを覗き込む。



「どうしました?どこか具合でも悪いのですか?」


心配そうに尋ねるエレストール。



その時気づいてしまった。

エレストールは自分と話すときはいつも跪いて目線を合わせていることを。



つまり、初めから子ども扱いされているということ。





「な、なんでもない!!」





動揺をしていることを悟られないように“あはは”と無意味に笑い
そのまま書庫から走り去った。


一人残されたエレストールはの変な行動に不思議そうに首を傾げるしかできなかった。











少し落ち込みながら渡り廊下を歩く。


すると中庭からキィンと金属がぶつかる音が聞こえた。




その元へ向かうとグロールフィンデルが一人で双子の王子達の剣の稽古をしていた。


双子の息のあった剣撃を無駄が動きをせずしっかりと受け止める。




が普段行っている剣の稽古の何倍もレベルが高いそれにしばらく立ち尽くして見惚れていた。





しばらく打ち合っていたが、エルロヒアの剣がグロールフィンデルの剣で弾かれ
その流れのままエルラダンの首筋に刃を突きつける。



「勝負あり…ですね。」


ニヤリと笑うと双子はどさりと座り込み息を整える。


「くっそ〜…今日こそ勝てると思ったのに〜・・・。」

「本当。二人掛かりでも勝てないなんて…。」


肩で息をして悔しそうに剣の師をにらむ。




「お二人とも随分腕が上がっていますよ。まぁ私に勝つにはあと500年は必要ですが。」

まったく息も乱さず愛剣を鞘に収める姿に双子は更に悔しそうにする。




「姫も見ていて勉強になりましたか?」

「え!?」



急に話をふられて驚くと同時に、グロールフィンデルの言葉での存在に気づいた双子が
の元に駆け寄る。



「情けないところ見られちゃったね。」

「うんうん。が見てるって気づいてたらもっと頑張れたのに〜。」




だが、双子を相手にしていてもに気づいていた武官長には
きっと500年経っても勝てないだろう。




「ところで、なんだか元気が無いみたいだけどどうかしたの?」

「何か悩み事?」



こんな双子でもの実兄。

妹の微妙な変化にもすぐに気がつく。


「えっと…悩みというか…」


その時、ふと気づいたことがあった。



そういえばエルラダンとエルロヒア、グロールフィンデルだって背が高い。

とくにグロールフィンデルに至っては裂け谷エルフの中で一番背が高い。




「お兄様たちとグロールフィンデルは身長いくつくらいありますか?」


の素っ頓狂な質問にエレストール同様3人とも驚いた表情になる。



「僕らは確か185センチくらいだったよ。」

「でも、最近身長伸びたからもっとあるかも。」



身長のみならず体重まで同じ双子はお互いの身長を見比べる。



「私は2000年くらい測ってませんが、以前測った時は2メートル以上ありました。」


「マジ!?」

「うわ〜!!絶対いつか越えてやる!!」


双子はまた悔しそうにしているが、は少し眩暈を覚える。



「ど、どうやったらそんなに背が高くなるんですか?」


また不思議な質問に首を傾げる3人だがとりあえず答える。



「別に何もしてないよ。」

「気がついたら成長してたし。」

「私も似たようなものです。気がついたらこの身長になってました。」



“ここまで伸びるのも困ったものですが”と苦笑いするグロールフィンデル。


裂け谷でも規定外のグロールフィンデルの身長は、家具の問題等多少なりとも不便を感じていた。


だが、にとってはそれは贅沢な悩み。




「あたしはいつになったら背が伸びるのでしょうか?」

耳を垂れて落ち込む



「でも、はまだ子供だし。」

「これから背も伸びるって。」


しゃがんでの左右に並ぶ双子。


「あ、でも…」

エルラダンが何かを思い出したのか顎に手をあてて言う。



「僕らがくらいの時はもう少し背が高かったかも。」

「あ、そういえばそうだね。アルウェンもそうだよね。」

は他のエルフに比べて成長が遅いかもね〜。」

「あはは〜。本当本当。でも可愛いじゃない。
 いつまでも小さくて可愛いでいてくれよ〜。」



左右から抱きしめてほお擦りする双子。

しかし、それをグロールフィンデルは冷や汗を掻きながら見ていた。



「…う…う…うるさぁい!!!!」


そう叫ぶと左右の双子から逃げ出しグロールフィンデルの後ろに隠れた。



「お兄様たち酷いです!!」

む〜っと唸りながらグロールフィンデルの服の袖をつまむ。




「あ、そういえば。姫、ちょっと待っていてください。」


グロールフィンデルは何かを思い出したのかポン、と手のひらを打つと
いそいそと館の中に戻っていく。

そのまま数分後手のひらに何かを持って戻ってきた。



「先日ロリアンに使いに行ったときに、ガラドリエル様とケレブリアン様、アルウェン姫から
 手紙と姫へと品物を預かってきました。」


一つの封筒と手のひらサイズの綺麗に包装された小さな箱を手渡す。



「あ、ありがとう…」


嬉しそうにそれを受け取ると大切そうに胸に抱え、小走りに室内に戻っていった。




「「グロールフィンデル。僕らには何か無いの?」」



恨めしそうに見上げる双子にグロールフィンデルは“ありますよ”と笑顔で1通の手紙を差し出す。



それを嬉しそうに二人で開け眺めていたが、すぐに青ざめていった。

どうやら今まで行っていたイタズラが全てロリアンに伝わっていたらしく
お叱りの内容だったらしい。











一方はというと…


部屋に戻りベッドの上で手紙を開封する。





『愛する


お元気ですか?毎日勉強や剣の稽古をがんばっているようですね。

先日の手紙でが顧問長に恋をしたと書かれていて

驚きと嬉しさとほんの少しの寂しさをを感じました。


そんな貴方へプレゼントです。

私達3人で作った香油です。

これを浴槽に数滴落とし強く願うのです。

自分の理想を。



きっと叶えてくれるでしょう。



では、身体に気をつけて日々を大切にすごしてください。

そして、近いうちロリアンに遊びに来てくださいね。

皆、貴方に会いたがっています。



愛していますよ。



ケレブリアン アルウェン ガラドリエル』





優しい筆跡で書かれた手紙に涙が溢れそうになり手紙を抱きしめる。


そして、ふと文面にもあった香油に気づく。

きっと一緒に渡された小さな箱に入っているだろう。



丁寧に包装を開けるとそこにはクリスタルで作られたビンの中に
透明感のあるピンク色の液体が入っている。


ふたを開けるとあたりに花のような果実のようなどちらとも言えない
爽やかな香りが広がった。




「理想を叶えてくれる…か。」


その香油を見つめてつぶやくと、侍女に声を掛けて湯浴みの準備をさせた。




←戻る
3→


2004/04/04


身長に悩むヒロイン。

文中にあるそれぞれの身長は全て想像です。
双子はまだ成長期という設定でお願いします。

余談ですが、一年で10センチ伸びた人間とは毒苺のことです。

小学校の時に。

ただ、問題はそのときとから成長が止まり今と変わらないということ…。
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送