居た堪れなくなりとにかく闇雲に走る。 今まで自分はなんてことをしていたのだろう。 自分で自分がいやになる。 ちょうど裏庭に差し掛かったとき、何かにぶつかり後ろに大きく倒れそうになる。 だが、“ぶつかった何か”によって倒れることは免れた。 「姫…!?どうしたんですか?」 それは執務をサボって裏庭で寛いでいたグロールフィンデルだった。 「グロール…。」 太陽とも見紛うその金髪が瞳いっぱいに広がると、思わず声を上げてその腕の中で泣き始めた。 初めは戸惑うグロールフィンデルだったが、すぐに気持ちを察したのかやさしく頭を撫でる。 「…っ……どうしようっ…あたし…なんて馬鹿なことを……。 エレストールに…嫌われちゃ……」 嗚咽を漏らしながら途切れ途切れに言葉をつなぐ。 グロールフィンデルも初めは何のことを言っているか分からなかったが、 最後の言葉でだいたい何があったのか予想がついた。 何も気にせず泣きじゃくるは成長する前の、純粋で朝日のようなそのものだった。 「エレストールに何か言われたのですか?」 その質問に少し戸惑うが、震える声で先ほどの出来事を話す。 「貴女は…女性としても…一エルフとしても何の魅力を感じないって…」 再び泣きじゃくる。 グロールフィンデルは頭を抱えて天を仰いだ。 「やっぱり…か。そろそろとは思っていたが…。」 「え?」 「いえ。何でもありません…。 姫、ひとつ私の質問に答えていただけませんか?」 「…なぁに?」 涙でぼろぼろの顔で見上げるに苦笑いするとその涙の跡を拭う。 「姫はエレストールのためにこの姿になったのですか?」 今までのの言動から察したらしい。 は驚いたように目を見開くが、少し俯くと小さくうなづいた。 「あたし…エレストールが好き…。でも…あたしは子供で、 お姉さまたちみたいに全然綺麗じゃなくて…だから…だから…」 また溢れる涙。 グロールフィンデルもそれを慌てることなく、また嘘の慰めも言うことなく優しく問いかけた。 「姫は、大人の姿ではなければ恋をしてはいけないと思うのですか?」 「ち、違う!!」 「では、元の、子供の姿でもエレストールを想っていたらいいのでは?」 もっともな言い分である。 だが、そう簡単に割り切れるほど安易な気持ちではない。 「でも…もとのあたしはただの子供で…女性の魅力なんてないし…。 エレストールにだって振り向いてもらえない…」 女性の恋心とはなんと難しい、と感服するグロールフィンデル。 下手な慰めは逆効果になろう。 「今の姫がどうかは分かりませんが、元の貴女は十分魅力的なエルフです。 これだけ谷中のエルフに愛されているのですよ。それこそあなたの魅力の証明です。」 「それは…あたしが数少ない子供エルフだからでしょ…。」 不貞腐れたような言い草にグロールフィンデルは目を丸くすると、近くにあるベンチにを促す。 「姫、それだけでこれだけ大勢ののエルフに愛されることはありませんよ。 皆貴女が姫だから愛しているんですよ。」 そう言うとの手を優しく取りその白い甲にキスをする。 「…ありがとう…グロールフィンデル…」 嬉しそうに微笑むその表情は、大勢のエルフを魅了しそして幸せにした笑顔だった。 「では、空気も冷えてきましたし中へ入りましょう。」 自分の上着を着せてをエスコートするが、当のは動く気配もなく考え込んでいる。 「姫?」 「……あたし…戻る方法分かったわ…。」 「え?」 すると肩に掛けられたグロールフィンデルの上着を本人に返し瞳を合わせて笑顔で言う。 「グロールフィンデル、ありがとう。おかげで元気が出たわ。 でも、絶対エレストールのことは内緒よ。」 ウインクをすると少し背伸びをしてグロールフィンデルのほほにキスをする。 「背伸びでキスできるのは今日まで。 また明日からしゃがんでもらわないといけないけど、そのときはお願いね。」 いたずらっぽく笑うと大急ぎで館に戻る。 一人残されたグロールフィンデルはほほについた小さな口紅の跡に小さく笑う。 一方一足先に館に戻ったは足早に侍女たちの下へ向かった。 「姫?どうしたのですか?そんなに急がれて…」 「ねぇ!!湯浴みの準備できてる!?」 のその迫力に少し戸惑う侍女。 「え、ええ…。できてますけど……。」 「そう、ありがとう。あたしすぐ湯浴みするから、あたしの元の服出しておいて。」 そう言うと足早に湯殿へ向かった。 「え…?元の服って…どういうことかしら…?」 一人戸惑う彼女だがとりあえず言われたとおりの元の服を取りに戻った。 ←戻る 7→ 2004/04/11 はい、グロールフィンデルお兄さんぶってます。 ちょっと話が飛びすぎな気もしますが…。 とりあえず次で終わりです。 お付き合いくださると嬉しいです。 |
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||